歯科から始めるザ・認知症予防
歳をとったときに、なりたくない病気の筆頭と言えば認知症。「防げるものなら防ぎたい」と思っているかた、多いのでは。実は最新の研究結果から認知症の7割弱を占めるアルツハイマー型認知症の発症抑制には、歯周病の治療と予防メインテナンス、とくにプラークと歯石の除去が有効であると分かってきたのです。アルツハイマー型認知症で亡くなった方の脳内には、歯周病に最も関係する「Pg菌」が発見されており、「Pg菌」が起こす炎症によってアルツハイマー型認知症の原因物質が体内に増えること、その原因物質がPg菌を脳内へ誘導していることが明らかになっています。
歯周病を引き起こす細菌が、なぜ脳の病気と関係するのだろうと、疑問に思う方がいるかもしれません。でも、「歯周病ってどんな病気かな」と思い出せばきっと納得するかもしれません。歯周病は、歯周病原細菌が引き起こす感染症です。歯の隙間や歯周ポケットのプラークに棲む歯周病菌が、歯ぐきに炎症を起こすことはよく知られていますよね。それでは、歯周病菌が、なぜ歯の周りだけでなく脳の病気の原因になるのでしょう?
歯周病菌は、歯周病の炎症でできた歯ぐきの粘膜の破れ目を入口にして血流にのり、歯ぐきの内部はもちろん、からだにも自由に入り込んでいるのです。長い間歯周ポケットの間に溜まったプラークや歯石を掃除しないと、歯周病菌にとって居心地のいい棲家になってしまいます。なかでもアルツハイマー型認知症の原因物質の増加に関与するPg菌は、腫れた歯ぐきからの浸出液や血液が大好物で、放っておくと、まるでPg菌にエサを与えて培養しているような状態になります。
歯周病は痛みの出にくい病気です。歯ぐきが腫れ、歯磨きした時に歯ブラシに血がついても、ほとんどの場合は痛みを感じないのでつい放置してしまう人が多いようです。毎日の丁寧な歯磨きはもちろん大切ですが、歯周ポケットの奥に溜まったPg菌の隠れ棲むプラークやプラークまみれの歯石は歯磨きで取り除くことはできません。定期検診でお口の中の慢性炎症を止め、「スローブレインエイジング」に努めましょう。