顎関節症|いまもと歯科クリニック|奈良県葛城市の歯医者

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顎関節症

奈良県葛城市いまもと歯科クリニック歯科衛生士の永山春日です。

はじめに、顎関節症について。
顎関節症は①顎関節の内部の異常 か②顎関節を覆う筋肉 に異常が起きた時に発症します。
そもそもこれって顎関節症?
①「音がする」口を開けたときに、顎関節から「カクッ」「コキッ」といった音がする。
②「痛みがある」口を開けたときや噛みしめたときに、ズキッと鈍い痛みやズキズキと重い痛みがある。
③「口が開かない」口を大きく開けようとしても、引っかかったように顎が動かない。

このうち一つ以上の症状があると、顎関節症といえます。ですがこの3つ、"重症度"は違います。
症状別 どう治す?顎関節症
①「音がする」タイプ
〜「音がするだけ」なら治療は必要なし〜
⚫︎口を開けたときに「音がする」というのは典型的な顎関節症の症状ですが、1番軽度の症状ですので、過度に心配される必要はありません。
また、とくに治療の必要はありません。
〜ただし、こんなときは歯医者さんへ〜
⚫︎症状に変化が出てきたら
「痛みがある」「口が開かない」といった症状が出はじめたら重症化しています。
こうした症状が出てきたら、できるだけ早く歯科を受診してください。
⚫︎重症化させないためには、生活習慣の改善を心がけましょう。
気づかないうちに「顎関節症に影響する習慣」をしていませんか?
後ほどチェックリストを見てみましょう。

②「痛みがある」タイプ
〜なるべく早く歯医者さんへ!〜
⚫︎「口を開けたり噛みしめると痛みがある」、または「今まで音がするだけだったのが、痛むようになった」場合は、できるだけ早く歯科を受診してください(遅くとも1週間以内)。
音が大きくなった、小さくなったなどは関係ありません。
⚫︎歯科では痛みの原因が顎関節の内部にあるのか、顎関節を覆う筋肉にあるのかを判断してから、指導や治療を行います。 
〜「痛いことはしない」が大原則〜
⚫︎顎関節と筋肉、どちらが原因にしろ、まず患者さんにしていただくことはひとつです。それは、「痛みが出るような顎の動きはしない」。「痛いなら口を開けないで、無理はしないで」。これが顎関節症の治療方針のひとつ、ゴールデンルールです。
筋肉を痛めたら安静にしますよね。それとおなじです。
⚫︎安静にしていても痛みが引かなければ、原因ごとに違った治療を行います。
〜痛みの原因が顎関節にある〜
⚫︎安静にしても痛みが引かないなら、鎮痛剤を処方したり、あごの負担を減らすマウスピースをつくります。くわえて、顎関節の内部を注射で洗浄したり、内視鏡での手術を行うこともあります(重症の場合)。
〜痛みの原因が筋肉にある〜
⚫︎安静にしても痛みが引かないなら、鎮痛剤を処方したり、あごの負担を減らすマウスピースをつくります。マウスピースはおもに就寝中に装着していただきます。
③「口が開かない」タイプ
〜なるべく早く歯医者さんへ!〜
⚫︎「大きく口を開けられない」、または「今まで音がなるだけだったのが、口が開かなくなった」場合は、できるだけ早く歯科を受診してください(遅くとも1週間以内)。音が大きくなった、小さくなったなどは関係ありません。
⚫︎「口が開かない」タイプの場合、ほぼ顎関節の内部に問題が起きています。
〜施術や開口訓練をします〜
⚫︎顎関節では、上顎骨と下顎骨のあいだに「関節円板」という平べったい組織があります。口を開いて、下顎骨が動くときにこの組織がクッションのような役割を果たすおかげで、私たちはスムーズに口の開閉ができます。しかしこれが何かの拍子にズレてあごの動きを阻害するようになると、口が開かなくなります。イメージとしては、歯車がズレて回らなくなってしまったというのが近いですね。
⚫︎歯科では、ズレた関節円板による動きの阻害を解消する治療(マニピュレーション)を行います。(写真1)※患者さんの状態によっては、この治療はできないこともあります。
⚫︎マニピュレーションが難しかったり、その後も開けにくさが残る場合には、開口訓練を行います。少しずつリハビリして、開けられるようにしていこう、というのがこの方法です。固くなった関節をストレッチでやわらかくするイメージです。
開口訓練の例(写真2)
①こめかみに手を添え、顎を右に動かします。
②あごを左に動かします。
③あごを前に突き出します。
④大きく口をあけます。
⚫︎①〜④を10回繰り返すのを1セットとして、1日に5セット行います。
⚫︎あごを動かすときはゆっくり大きく。「筋肉が
伸びている」イメージを大事に。

顎関節症に影響する習慣"チェックリスト"
日常の生活習慣が、気づかないうちに顎関節症のリスクになっていることがあります。顎関節症の予防にや症状改善のために、変えられる要因を変えていきましょう。
⬜︎スマホを見る時間が増えた。
⬜︎猫背気味である。
⬜︎オンライン(リモートワーク)中心の生活をしている。
⬜︎よく頬づえをつく。
⬜︎うつぶせ寝の習慣がある。
⬜︎バイオリンや吹奏楽器を演奏する。
⬜︎気がつくと、上下の歯がくっついている。
⬜︎家族から寝ているときの歯ぎしりを指摘されたことがある。
⬜︎朝起きると、頬から下あごのえらにかけてだるさがある。
⬜︎歯がすり減ってきた(歯が短くなった)。

〜生活習慣と顎関節症の関係〜

⬜︎スマホを見る時間が増えた⬜︎猫背気味⬜︎オンライン(リモートワーク)中心の生活⬜︎頬づえ⬜︎うつぶせ寝⬜︎バイオリンや吹奏楽器を演奏
…にチェックが入ったかた
⚫︎スマホやパソコンを見るときに、下を向いたり、前傾姿勢や猫背になっていませんか。また、頬づえやうつ伏せ寝の癖はありませんか、これらは、顎関節への負担となります。
⚫︎部活動や趣味で長時間バイオリン(あごで楽器を支える)や吹奏楽器(口で楽器をくわえる)を演奏されているかたも、顎関節症になりやすいです。

⬜︎気がつくと、上下の歯がくっついている
…にチェックが入ったかた
⚫︎ものを食べていないときは、上下の歯のあいだはわずかに開いているのがふつうです。しかし無意識に上下の歯を噛み合わせることが癖になっているかたもいます。これは「TCH」(tooth contacting habit:歯列接触癖)と呼ばれます。
⚫︎改善には、ご自身にTCHがあるのを認識することが第一歩。上下の歯が当たっていることに気づいたら、意識的に離すようにしましょう。

⬜︎寝ているときの歯ぎしり⬜︎あごのだるさ⬜︎歯がすり減ってきた
…にチェックが入ったかた
⚫︎睡眠中の歯ぎしりや噛みしめは、顎関節症の大きな原因です。朝起きるとあごがだるい日が続く、歯がすり減ってきたというのは、典型的な歯ぎしりや噛みしめの症状です。
⚫︎歯のすり減り(咬耗)をはじめ、舌が歯の形にへこむなど、睡眠時の歯ぎしりの影響は口の中に顕著に現れます。歯医者さんからの指摘で、気づくかたもいます。
⚫︎歯ぎしりは、歯医者さんでつくってもらったマウスピースを睡眠中に装着すると、緩和されることがあります。

〜顎関節症に影響する習慣〜

変えられるものから変えていこう!
♦︎うつぶせ寝や睡眠中の歯ぎしり、TCHの習慣は、そうそう変えられるものではありません。顎関節によくないからといって、「部活動や趣味をやめよう」ともいきません。ですので、「自覚しやすい・変えようと思って変えられる要因」から変えていきましょう。
♦︎意識して変えることが可能な要因のひとつが、「スマホ」です。顎関節に悪い姿勢(前傾姿勢や猫背)でスマホを見ていて、しかもそれが長時間続くというのは、顎関節症の大きなリスクとなります。
♦︎ただし、「スマホを使うのをやめよう」のきうことではありません。いまはスマホのない生活は不可能ですので、見るときの姿勢の改善や、15〜30分ごとにインターバルを置くなど意識してもらえばと思います。

次に、どんどんさせたい!赤ちゃんのお口刺激。
指をくわえたり、手の甲や拳を舐めたりといった赤ちゃん特有の光景。とっても愛らしいてすよね。でもかわいいだけじゃないんです。このしぐさには、大切に意味があるのです。赤ちゃんの"お口刺激"についてまとめました。

〜触れて、なめて、吸ってお口を刺激〜
赤ちゃんは、唇や舌、指で遊ぶのが大好き。
指1本や2本、あるいは手の甲をなめまわしたり、はたまたギュッと握った拳をお口へ入れようとしたり。手だけでなくタオルやおもちゃもなめます。お口がただ触れているだけのこともありますが、心地よさも感じています。このような赤ちゃんのしぐさは、一般的に生後1ヵ月半〜2ヵ月頃からみられます。さらに生後3〜4ヵ月にもなると指を吸う、いわゆる「指しゃぶり」に移行していきます。口で触れる、なめる、吸うといったしぐさは、自分でお口に刺激を与えている行為で、発達にとって大切なことです。

〜お口刺激はなぜ大切?〜
大切なワケ①口で「触れる」「なめる」は、脳への刺激。
口で指を触れる・なめる・しゃぶるという行為を「指しゃぶり」とひとくくりにしてネガティブに捉えがちでしたが、近年見直しがされています。赤ちゃんは、生まれたばかりの頃から周囲の環境を探求しようとして、自分の唇や絶対で、指やおもちゃを触れたりなめたりします。これらの行為によって赤ちゃんは、物の形や質感、温度などのさまざまな感覚刺激を脳に伝えます。そして、それらの刺激をもとにして世界を理解しわ学習していくのです。

大切なワケ②最初に身につく五感は「触覚」。
触覚は、「五感」の中で赤ちゃんがもっともはやくに身につける感覚です。一般的には視覚情報がいちばん多いと思うかもしれませんが、生まれたばかりの赤ちゃんの目は、ほとんど見えていません。一方、触覚はほぼ完成しており、痛みや物の質感も感じ取ることができます。視聴覚の情報は実際に「身体を通じて残る感覚」です。つまり、はやい時期に脳に刺激を与えられるのは、唇や舌を通じた触覚情報なのです。
五感の発達の順序
出生→触覚(触覚はほとんど完成しています。痛み、冷温、物の質感も感じることができます。)→嗅覚(出生直後から、嗅覚で母親の乳房の位置を探すことができます。)→聴覚(生後4〜6ヵ月頃から、しっかり音を聞き分けられ、母親と他人を区別できるようになります。)→味覚(味蕾の数は成人の1.3倍存在します。)→視覚(生後3ヵ月頃の視覚は0.04〜0.08。6ヵ月頃でも0.1です。) 

大切なワケ③最初に自発的に動かせるのはお口。
自発的に体を動かすという点でもっともはやいのは、お口です。もちろん手足も動きますが、目的なくバタバタするだけです。お母さんのお腹にいるときから赤ちゃんが指をなめたり口へ持っていくことは、よく知られており、生まれた直後は一時的にそれがなくなります。出生時、触覚はほぼ完成していますが、母乳やミルクを飲むのは、反射行動(本能)によるものです。一般的には生後1ヵ月〜2ヵ月頃から口に触れた物をなめたりするようになります。タオルがお口にちょっと触れれば一生懸命なめたり、唇を動かしたり。そのうちに手が動いて指を口にもっていったり、足を曲げて指をなめたりしながら、手や足の存在を、自分の体を認識していきます。「自発的に体を動かす」ということは、赤ちゃんが自分の力で成長しようとしていることのあらわれです。

大切なワケ④「食べる」「飲み込む」の学習につながる。
よだれが出ている赤ちゃん、見かけますよね。早い子では1〜2ヵ月で出てきますが、いっぱい出るのはとてもよいこと。それはなめたりお口を動かすことをたくさんしている証だからです。お口を動かしたりしていると、お口が刺激されます。すると唾液がたくさん出ます。唾液には、一般的に赤ちゃんにとって大切なことのひとつに、「飲み込み(嚥下)の学習になる」があげられます。赤ちゃんは母乳やミルクをゴクゴク飲んでいますが、簡単に言えばお口を"素通り"して嚥下する、反射的な行為といえます。でも赤ちゃんのお口にたまる唾液は、ネバネバとしていますから、"素通り"とはいきません。私たちが食べ物を食べるときは、お口の中にいったん食べ物をとどめ、舌でそれをお口の奥へ送り込み、そして、ゴクンと嚥下します。ですのでよだれが出れば出るほど、嚥下の学習の機会になるわけです。お口刺激は、将来の「食べる」ことにつながっているのです。

大切なワケ⑤はやい段階から発達を促す。
障がいによって、指をなめようと思っても体を動かせない赤ちゃんもいます。そうすると、最初に得たいお口からの刺激が非常に乏しくなってしまいます。そういった赤ちゃんの多くは、何らかの障がいが脳にあるため、自ら刺激をしたいのにできないことが多く、発達がより困難になりやすいです。そこで最近では、障がいをもつ赤ちゃんのお口に、刺激を与えていく取り組みが広がっています。生後すぐに保育器に入った赤ちゃんは、体にさまざまなチューブをつけていたりします。以前ですと、赤ちゃんがそのチューブを外してしまう懸念から、手にミトン(手袋)をかぶせることがよくありましたが、それを控えるようになってきています。また、体をあまり動かせない赤ちゃんでは、お母さんの指を赤ちゃんのお口に持っていくことも。このように、はやい段階からお口を刺激しておきたいのです。

このようにお口で触れる、なめる、吸うといったしぐさは、発達に大切な行為です。「人は口から育つ」と言えます。

〜気になる「指しゃぶり」いつまで?〜
「指しゃぶりはいつまでしてよいのか」
は、保護者のかたが気になるところだと思います。日本小児歯科学会では、3歳ごろまでは禁止する必要がないこと、また、4歳以降も頻繁な指しゃぶりが続く場合は小児科医、小児歯科医、臨床心理士の連携で積極的に対応していくことを推奨としています。指をお口へ持っていく行為は、グラフ(写真3)のよつに年齢が上がるにつれ生理的なものから心理的なもの、癖へ移行すると考えられています。手を使った遊びをたくさんして、日中の活動をしっかりさせることで、結果的に減少していくと思われます。

♦︎さまざまな物をなめたりお口に持っていくことは、雑菌などをお口に入れることでもあり、免疫力を身につける意味でも大切です。最近は、コロナ禍によりお母さんがたや保育に関わるかたの衛生意識の高さが顕著になっているように思います。赤ちゃんが触れる物すべてを過剰に清潔にしたり、口に触れさせないようにしたり。今回紹介したように、お口刺激は赤ちゃんにとって大切な行為ですし、指をお口へ入れたり、おもちゃをなめたりするときの多くは鼻で呼吸しますから、口呼吸を減らすことにもつながります。ぜひ、口で触れる、なめる、吸うという赤ちゃんのしぐさを周りの大人が後押ししてあげましょう。