〜みんな知りたい!歯磨きの科学〜|いまもと歯科クリニック|奈良県葛城市の歯医者

トピックス TOPICS

〜みんな知りたい!歯磨きの科学〜

奈良県葛城市いまもと歯科クリニック歯科衛生士の永山春日です。

〜みんな知りたい!歯磨きの科学〜
歯磨きの仕方「本当のところ、どれが正解なのかなぁ?」と迷ってしまうこと、ありませんか?毎日磨いているのに、なぜか虫歯ができてしまったり、磨いているつもりなのに歯茎が腫れてきたり。これまでずっと続けてきた歯磨きに「自信がない」というかたへ、この特集を贈ります!

♢歯磨きのターゲットは、この細菌たち!
虫歯を防ぐなら、虫歯菌の頑丈な棲家、バイオフィルムがターゲット。歯周病を防ぐなら、歯周ポケットに溜まるプラークを狙います!

厚生労働省の調査によると、日本人の約95%が毎日行っているという歯磨き。約7割の方が1日2回以上磨いています。こうしてみると、多くの方が勤勉に歯磨きをしていることがわかります。一方で、よく聞かれるのが、「自分の歯磨きに自信がない」と言う声です。「気づくと虫歯ができていた。」「歯茎が腫れてきた。」ということでは、「このままでいいのかな」と心配になるのも無理はありません。そこでこの特集では、歯磨きの目的を今一度確認し、目的を達成するために何をしたら良いのかを、解説したいと思います。歯磨きの効果を高める歯磨き剤の成分などについてもご説明しますが、中学校で勉強した理科を、頭の奥から少しだけ引っ張り出してお読みいただければ嬉しいです。
さて、「歯磨きの目的」とは何でしょう?「虫歯や歯周病の予防」?確かにそうですが、これだけでは歯磨きの具体的なターゲットが明確になりません。歯磨きの目的はズバリ「悪さをする細菌を減らすこと」です。
皆さんを悩ませる歯科の病気の代表格といえば虫歯と歯周病ですが、虫歯菌と歯周病菌はそれぞれ性質が違い、くっつく場所もしつこさも違います。
狙い除去率をあげるには、まず敵を知ることが必要です。歯磨きのハウツーをお教えする前に、虫歯菌や歯周病菌がどこでどんな悪さをするのか、図解で整理しておきましょう。

♢虫歯菌と歯周病菌では、性質も暴れる場所も大違い。おのずと除去方法も使い分ける必要があります!(写真1)

⚫︎バイオフィルム
細菌が作る多糖体のじょうぶな膜(菌膜)で、排水管のヌメヌメの仲間。歯にベタベタくっつく。殺菌剤がしみこみにくいので、バイオフィルムの中は虫歯菌をはじめとする細菌たちの楽園。熟成して頑固にくっつくには3〜4日かかるので、歯ブラシでこすり1日1回は取り除いておくことが肝要。
⚫︎歯周病菌
歯の健康に大きな被害をもたらすのが、歯周ポケットの中に潜む歯周病菌。歯周病菌の出す毒素が、歯茎や歯、支える骨に炎症を起こし「歯周病」を引き起こす。一晩で約1000倍に増殖するので、日々の除去は必須。空気が苦手で、奥へ奥へと隠れたがるため、除去はなかなかやっかい。
⚫︎プラーク
ゆるやかにつながった細菌集団で、バイオフィルムほどのしつこさはまだないが、歯と歯茎の間にできた。歯周ポケットなどにたまりやすい。軽石状で穴ぼこだらけの歯石にこれが入り込むと歯ブラシでは除去できず、歯周病菌が炎症を引き起こす原因に。歯科医院で歯石ごと除去してもらおう。
⚫︎むし歯菌
歯面にくっついたバイオフィルムのじょうぶな膜をシェルターとし、なかにたてこもってヌクヌクと繁殖する。砂糖が大好きで、さかんに食べてはじゃんじゃん酸を排泄するため、バイオフィルムのなかは酸でいっぱいに。この酸が歯を溶かして「むし歯」ができる。

♢どこに何をすると歯磨き効果が上がる?
歯磨きの目的は、歯や歯茎の周りの細菌を減らすこと。虫歯菌と歯周病菌では、効率的に細菌を除去できる歯ブラシの選び方、当て方、動かし方が違います。(写真2)

⚫︎ターゲットの虫歯菌、歯周病菌の性質と、隠れている場所をつかんだら、次は実践あるのみ。虫歯予防、歯周病予防のそれぞれに効く磨き方をお教えしましょう。お子さんなら虫歯予防が中心なので、デッキブラシタイプの歯ブラシと、歯間はフロスで。虫歯、歯周病の両方が気になる大人の方は、デッキブラシタイプ、細く長く柔らかいテーパード毛タイプの2種類を用意し、毛先が届かないところはフロスか歯間ブラシを使います。

⚫︎歯周病予防なら?
歯と歯茎の境目のミゾ、歯周ポケットのプラークの除去には、細かく長くやわらかなテーパード毛タイプのブラシおすすめ。45度の角度でミゾのなかに差し込んで優しく動かしプラークを除去します。
(歯ブラシの届かないところには、フロスや歯間ブラシを使います。)
⚫︎虫歯予防なら?
歯面にしつこくくっつく。バイオフィルムの除去には、毛先がフラットなデッキブラシタイプの歯ブラシがオススメ。バイオフィルムを取り除くにはこすり取るのがいちばん。デッキブラシタイプなら歯の歯面を効率よくこすれます。
⚫︎歯石除去
硬い歯石は、どんなに頑張って磨いても自分では取り除けません。放っておくと歯周病が進行してしまうので、歯科医院で取り除いてもらいましょう。

♢歯ブラシ、どう動かすといい?
もしかして、子供の頃に学校で教わった「学童向け」の歯磨き法を大人になった今も続けている方はいませんか?歯周病が増えてくる大人には、大人向けの歯磨き法が必要です!

〜虫歯予防がメイン!子供の歯磨き〜
*エナメル質が柔らかく、虫歯になりやすい。
*歯周病を罹患率はとても低い。
→ターゲットは歯面です!

〈虫歯予防に!スクラビング法〉
歯面に歯ブラシを当てて小刻みに数ミリずつ動かします。力が入りすぎないよう、仕上げ磨きをするときは鉛筆持ちで。
〈虫歯予防に!フォーンズ法〉
小さなお子さんの自分磨きや、簡単に済ませたいときの仕上げ磨きに。大雑把ながら、歯磨き剤のフッ素を歯に広げる効果はバッチリ。
〈CHECK!!〉
⚫︎デッキブラシタイプの歯ブラシ(子ども用はこのタイプが多い)で歯茎を磨くと、お子さんが痛がって歯磨き嫌いに。仕上げ磨きはあくまでも歯をこすりましょう。
⚫︎フッ素配合歯磨き剤を使いましょう。

〜虫歯、予防と歯周病予防を!大人の歯磨き〜
大人の歯は?
*歯周病罹患率が8割越えに。
*唾液に長年きたえられたエナメル質は硬く丈夫になる。
*ところが、歯周病の影響で歯茎がやせると、根元の象牙質がむき出しになり、むしろ虫歯になりやすくなる。
*持病の薬の副作用で、唾液による歯の修復作用が十分働かない人が増える。
→ターゲットは歯面と歯周ポケットの両方!

〈虫歯予防に!スクラビング法〉
歯面に歯ブラシを当て、歯の間に毛先を入れてから、小刻みに数ミリずつ動かします。
〈歯周病予防に!バス法〉
プラークのたまる歯と歯茎のミゾ(歯周ポケット)や、歯の間に歯ブラシの先を優しく差し込み、細かく動かします。
〈CHECK〉
⚫︎磨く力が強すぎると、歯が摩耗したり、歯茎が傷んで痩せるといったトラブルの原因に。グーで握らず、鉛筆のように歯ブラシを持って磨くと、ゴシゴシ磨きになりにくいです。ぜひお試しを。
⚫︎虫歯予防にはフッ素配合の歯磨き剤を。1450ppmの高濃度フッ素配合製品もあります。虫歯予防にお勧めです。

〈COLUMN〉
〜懐かしのローリング法〜
子供の頃に、「歯磨きはローリング法でクルリクルリと」と学んだ中高年の方が多いのでは?この方法、実は歯面と、歯と歯茎の境目の清掃効率が悪いため、現在は推奨されていません。
では、なぜ以前推奨されたのでしょう?
実は日本に限らず、当時の歯磨き剤には非常に硬い研磨剤が使われ、スクラビング法では歯が摩耗しやすかったんです。次善の策として、歯ブラシをクルクル回して、摩擦を防ぐローリング法が推奨されました。現在は、メーカーさんの多大な開発努力が実り、歯よりも柔らかくて除去効率も高い歯磨剤が配合され、歯磨き剤で歯が摩耗する心配がなくなりました。おかげで私たちも、もっとも細菌の除去効率の良いスクラビング法とバス法を推奨できるようになったと言うわけです。

♢歯磨き剤はなぜ使うべき?
フッ素など、有効成分の入っている歯磨き剤(医薬部外品)を使わないのは、せっかくの予防のチャンスをみすみす逃しているようなものなんです!

歯磨き剤は毎日お使いください。現在国内で販売されている歯磨き剤(医薬部外品)には、歯の結晶をよりスピーディーに作って、酸で溶けた(脱灰した)歯を修復(再石灰化)してくれるフッ素や、細菌の繁殖を抑える殺菌剤など、とても重要な有効成分が入っているからです。
また、歯磨き剤というとよく話題になる研磨剤も、ご心配には及びません。現在、薬局や歯科医院で普通に売られている医薬部外品の歯磨き剤なら、よほど強いヤニ取り効果のある製品でもない限り、歯よりも柔らかい高品質の研磨剤が入っており、歯を摩耗させる心配はありません。
研磨剤にはバイオフィルムを落としやすくする優れた効果があるので、細菌を効率よく除去するには、やはり歯磨き剤を使った方が圧倒的に有利です。
と言うわけで、いつもの歯磨きに、ただ歯磨き剤を加えるだけで、予防効果が期待できるのですから、使わないなんてもったいない。歯の修復と効率的な細菌除去の観点からぜひ使っていただきたいです。
特にフッ素は、現在市場に出回っている歯磨き剤の90%以上に配合され、その虫歯予防効果は、歯ブラシで歯面を擦るよりも、むしろ信頼性が高いと世界中で認められている重要な成分です。
毎日すべての歯を完璧に磨くことなど不可能なのですから、歯磨き剤の助けも借りて、予防の成果を上げていきましょう。

♢ 1日に何回磨くと効果的?
1日3回歯磨きしているのに、虫歯や歯周病になると言うかた。本当に効果のある歯磨きは回数よりも質なんです。
歯磨きは、回数よりも質です。科学的根拠のある歯磨き法は、実は「最低でも1日1回、しっかりとバイオフィルムやプラークを除去する」こと。残念ですが、回数だけ増やせば効果が上がるというものではありません(ただし、歯磨きのたびにフッ素配合歯磨き剤を使えば、フッ素による虫歯予防効果は期待できます)。
虫歯菌が糖を取り込んで、バイオフィルムを作るまでには約18時間。そのバイオフィルムが熟成し、しつこいベタベタになるまでに、3〜4日。
また、歯周病菌は一晩放っておくと1000倍に増えます。という事は、細菌が隠れている場所を狙って、最低1日1回、きちんと歯磨きし除去していれば、虫歯菌や歯周病菌が勢力を伸ばしてしまう前に、先手必勝で彼らの活動を押さえ込むことができると言うわけです。
そこで「朝は忙しくて」と言う方なら、朝はデッキブラシタイプの歯ブラシでざっと磨き、足りない分を1日の終わりのほっとできる就寝前に磨く、と言うのはいかがでしょう。1日1回は、虫歯菌と歯周病菌の隠れている場所を意識して丁寧に磨き、フロスや歯間ブラシも使ってお掃除しましょう。
また、朝はデッキブラシタイプで歯面を中心に、昼はテーパード毛タイプで歯周ポケットを、夜は、両タイプの歯ブラシに加え、フロスか歯間ブラシでお掃除するといった道具の使い分けも、マンネリに陥りにくいかもしれません。自分に合うやり方を工夫してみましょう。

♢定期的メインテナンスはなぜ3〜4ヶ月ごとに必要?
「人生100年」が現実になろうとする今、歯も100年間もたせるには、従来行われてきた「毎日の歯磨き」
だけでは、とても追いつきません。歯科医院のプロフェッショナルケアを受け、歯の寿命も伸ばしましょう!
「人生50年」の頃は、セルフケアだけで一生もっていた歯。ところが今は「人生100年」。
50年を100年に伸ばすのは並大低ではありません。現に、今でも50歳と言えば、歯を失いはじめる人がぐっと増える年代です。虫歯に加え、長年放っておいた歯石が溜まりに溜まり、そこに隠れた歯周病菌がじわじわと暴れ始めるからです。
虫歯は、歯がある限り、生涯にわたって、縁の切れない病気ですし、歯周病のリスクは年齢とともに高まります。「人生100年」の時代に一生歯を使い続けるには、セルフケアだけでは不可能。そこにもっと何かを足す必要があります。それが、歯科医院での歯石除去と定期的なクリーニングです。
歯石除去は、金属の器具で歯にこびりついた歯石を取り除く処置。歯を削らないよう最新の注意を払っていますが、日常的に繰り返し受けて良い治療ではありません。そこで歯科では歯石の除去後、3〜4ヶ月ごとにメインテナンスを受け、歯と歯茎の中のクリーニングを受けていただくようお勧めしています。(写真3)
歯石は放っておくと1年もすればまたこびりつきます。つまり1年に1度の通院では、受診のたび歯石除去が必要になってしまいます。しかし3〜4ヶ月ごとに歯周ポケットをクリーニングすれば、歯石の付着が格段に減り、歯石除去後の清潔な状態を、より長く維持できるのです。
もうひとつ、3〜4ヶ月ごとのメインテナンスをお勧めする理由があります。それは、虫歯菌も歯周病菌も、クリーニング後約3ヶ月弱で繁殖力を回復することがわかっているからです。細菌による被害を抑える3〜4ヶ月おきのクリーニングはギリギリのリミットです。
平均寿命が伸び続けている今、一生歯を使っていくには、人生50年の頃と同じ方法を続けていてはとても無理。歯磨きの質の向上、フッ素の利用、そして歯科医院の定期的なメインテナンスで的確な医療サポートを受けることが重要になります。
一生自分の歯で美味しく食べられるよう、3〜4ヶ月ごとのお付き合いを始めましょう。

♢Question①
毎食後3分間ちゃんと歯磨きしてるのにまた虫歯ができちゃいました。私の歯磨き方法ってどこがまずいんでしょう?
Answer
「バイオフィルム」って言葉、聞いたことありますか?歯の表面に虫歯菌がつくるとても丈夫な膜のことです。この中に閉じこもった虫歯菌の出酸が歯を溶かしてしまうのが虫歯。つまり、このバイオフィルムを歯ブラシでこすり落とせていないのだと思いますよ。

♢Question②
歯の周りの細菌を効率よく減らすための歯磨きのコツって何かありますか?
Answer
虫歯予防と歯周病予防では、歯ブラシのタイプ同様、歯ブラシの動かし方も変えた方が歯や歯茎を痛めることなく、効率的に細菌を除去できます。また、子供の頃に教わった歯磨き法を大人になってもずっと続けていると、細菌が十分に除去できません。大人になったら大人向けの歯磨き法に変えていきましょう。

♢Question③
丁寧に磨いていれば、歯磨き剤は特に使わなくてもいいですよね?
Answer
歯磨き剤はぜひ毎日使ってください。歯磨き剤に配合されたフッ素・殺菌剤などの有効成分が予防の役に立つからです。特にフッ素を使うと、酸で溶けた歯の再石灰化のスピードが上がり、しかも再石灰化した歯がもとの歯よりも硬くなるので、効率よく虫歯予防ができます。

♢Question④
歯磨きを毎食後必ずしていますが、予防がうまくいきません。もっと回数を増やすべきですか?
Answer
歯磨きは1日何回するかより、除去すべき細菌のターゲットに、1日1回でもいいから、歯ブラシやフロスをきちんと届かせることが大事なんです。細菌は就寝中に繁殖しやすいので、就寝前の歯磨きが効果的。夜、のんびりできる時間にじっくりゆっくり歯を磨いて、1日の汚れを落としましょう。

♢Question⑤
私は一生自分の歯で食べて暮らしたいです。どうすれば歯を長持ちさせることができますか?
Answer
毎日の丁寧な歯磨きにプラスして、歯科医院に3〜4ヶ月おきに通い、歯と歯周ポケットの中のクリーニングを受けましょう。虫歯菌も歯周病菌もクリーニング後しばらくは元気がなくなりおとなしいですが、再び活発に動き出します。そのギリギリのリミットが3〜4ヶ月後だからです。