奈良県葛城市にあるいまもと歯科クリニックです。 歯が抜けた場所、放置していませんか? 歯周病などで奥歯を1本失ってしまったかた。「インプラントにするか入れ歯にするか決めるまでしばらくそのままにしておこう」と治療を見送ってませんか。長い期間、そうして放置していると、歯がなくなった場所にまわりの歯が倒れてきたり、飛び出してきたりして、いざ部分入れ歯やブリッジ、インプラントを入れようとした時に、矯正治療が必要になってしまうことがあるのです。 歯が抜けた場所の放置はキケン! 先送り、先延ばし、放置、順延、明日から本気出す、、、。長い人生、それでなんとかなることもありますが、歯を失ったときは、それだとまずいことが起きやすいのです。 【Q1】 歯周病で奥歯を1本、失った私。入れ歯かインプラントかと迷ってるうちに、半年以上経ってしまいました。それで今日、歯医者さんで見てもらったんですか、隣の歯が倒れていることを指摘されました。 ↓ 【A】 歯を失った場所をどんな治療で補うか、迷いますよね。でも、決断をあまり先延ばしにすると歯のなくなったスペースにまわりの歯が動いてきて、そのままでは歯を補う治療ができなくなることがあるのです。 ◎矯正治療が必要になってしまうことも。 歯周病やむし歯で、歯を失ってしまったことはあるでしょうか。そして、その場所をそのままにしてはいないでしょうか。歯を失った時、目立つ前歯はすぐに歯を補う治療を受けても、外から見えにくい奥歯の場合、治療を先延ばしにしてしまうかたがいらっしゃいます。「部分入れ歯は違和感に慣れが必要って言うし、ブリッジは隣の歯を削るし、インプラントはお金がかかるし、、、、」と迷われるのも無理のない話ですが、抜けた場所がそのまま長期間放置されていると、「空いたスペースにまわりの歯が動いてきてしまう」と言うことがあるのです。 そうなると、いざ「入れ歯やブリッジ、インプラントを入れよう」と決めたときに、動いてきた歯が邪魔になって、入れ歯やインプラントが入れられず、まずは歯を元の位置に戻す矯正治療が必要になります。つまり、歯を補う治療を先延ばしにしていたために、さらなる治療が必要になってしまうわけです。患者さん本人にも私たちにも非常に残念な事態です。 くわえて、空いたスペースに歯が動いていったり、歯がないほうで噛まなくなって、咀嚼の仕方が変わると、歯にかかる力のバランスが変化して、歯並び全体に影響してくる可能性もあります。こうした事態を防ぐためにも、歯を失った場合は速やかに歯科で対応をご相談いただければと思います。 ◎歯が動く、そのわけは? まずは、まわりの歯が倒れたり、飛び出たりする理由をご説明しましょう。ポイントは「歯にかかる力」です。 歯は力の釣り合う場所に並びます。 歯というのは、それ単体で今の位置に並んでいるわけではありません。くちびる、ほお、舌からの力、隣り合う・噛み合う歯が力、噛んだ時の力、姿勢やお口の癖による力など、「外部から加わる力のバランスが取れる位置」に並んでいます。 この力の均衡が崩れると、歯が動き、歯並びも乱れ始めます。歯がなくなってしまった場所があると、そのスピードは加速してしまいます。 ◎歯を失う3つの理由 歯を失う原因は、大きく分けて3つあります。厚生労働省による最新の「歯科疾患実態調査」によると、1位が歯周病、2位がむし歯、3位が歯の破折です。歯が割れたり折れたりする破折はむし歯が広がって、神経を除去した歯に起こることが多いです。このほかに、先天性欠如により、生まれつき歯のない場所を、そのまま放置されてる方も多いです。先天性欠如の隙間にも、歯は動いていき、歯並びや、噛み合わせを変化させます。かかりつけの歯科で早いうちから把握してもらい、定期検診を受けながら、適切な時期に矯正治療などの対処をしてもらいましょう。 ◎歯によって「動きやすさが違う」 歯を動かすにあたって簡単な順から説明すると、[1]歯を飛び出させる[2]切歯を倒す[3]犬歯を後ろに倒す[4]臼歯を前に倒す[5]臼歯を頬側や舌側に倒す[6]切歯を前や後ろに平行移動する[7]下の犬歯を後ろに平行移動する[8]切歯を舌側に平行移動する[9]臼歯を後ろに倒す[10]上の犬歯を後ろに平行移動する[11]臼歯を前に平行移動する[12]前歯を押し込む[13]臼歯を後ろに平行移動する[14]臼歯を押し込む この順番は「矯正治療で歯に力をかけたときに、どういう動きが起きやすいか」をまとめたものです。全体として、歯は飛び出やすく、倒れやすい。後ろ(奥歯のほう)よりも前(前歯のほう)に動きやすい。押し込む動きは、非常に難しいという傾向がありますが、これは歯を失ったときに、まわりの歯が飛び出やすく、倒れやすい、前(前歯のほう)に倒れやすい飛び出た歯を押し込むのは、時間がかかるとも言えます。 【放置しているとどうなるの?①】 失った奥歯を放置すると、支えを失った隣の歯が、空いたスペースに倒れてきます。動くスピードは比較的早く、1年もすれば倒れはじめます。(個人差あり)これは部分入れ歯を入れた方にも当てはまる話で、部分入れ歯を作ったとしても、はめずに放置していると、歯が動いてきてしまいます。 【放置しているとどうなるの?②】 そのほかにも失った奥歯を放置すると、噛み合う歯を失った向かいの歯が、空いたスペースに飛び出てきます。[倒れる]ケースよりもスピードは遅く、数年もすると飛び出てきます。(個人差あり)歯が飛び出してきてしまうと、いざブリッジ、部分入れ歯やインプラントをいれたい!と思った時に、人工歯を入れるスペースがないので治療の妨げになります。先ほどの歯を動かしやすい順番でいうと、歯を押し込む治療はもっとも歯を動かすのが大変な治療になるので、矯正治療でなおすとしてもアンカースクリューといってチタン製の小さな医療用ネジを埋め込み、これを支点にして歯を動かすので時間のかかる治療になります。 【歯をほうちしていりとどうなる?③】 歯は、くちびる、ほお、舌、隣り合う・噛み合う歯などからの力が釣り合う場所に並ぶと言いましたが、歯を失うとその力の均衡が崩れます。アーチ構造の橋からブロックが1つなくなったように、歯並び全体に影響を与え、噛み合わせを変化させます。歯が抜けたところは噛みにくくなるので無意識に、反対側で噛むようになります。すふと、歯への力のかかり方もかたよります。そうした変化は歯の破折や顎関節症のリスクを高めます。また、歯周病であごの骨が失われつつ歯に無理なく力がかかると、歯周病が悪化します。(咬合性外傷) 【食生活も乱れます】 歯並びや噛み合わせの変化は、食生活にも影響します。歯が抜けたところは噛みにくいため、よく噛まないで食べられるやわらかい食品を選ぶようになりがちです。やわらかい食品は、糖質が多いーーーつまり、炭水化物や砂糖の多い高カロリーな食品です。それらを食べ続けると、むし歯になりやすいですし、メタボリックシンドロームや糖尿病なのの生活習慣病にもなりかねません。 【歯をこれ以上失わないために、、、】 最後にここまで読んで疑問に思われることへのQ&Aやこれ以上歯を失わないためのポイントをお伝えします。 Q 、歯が倒れてきますが、噛めないこともないし、このままでもよいかなあ。 A 、歯が倒れてくると、そのまわりの顎の骨が減り、歯周ポケットができます。倒れたぶん、歯みがきしにくくなり、歯周ポケットのせいで歯周病のリスクが高まります。矯正治療で歯を垂直に戻すと、あごの骨もある程度回復します。 Q、インプラントなどを入れて噛んだら、飛び出た歯は自然な戻りませんか? A、歯を失った場所に向かい合う歯が飛び出てきてしまった場合、そこにインプラントなどを入れてガチガチと噛んでいるうちに、飛び出た歯が戻るのでは?らと思うかもしれませんが、飛び出た歯が噛む力で戻ることはありません。そもそも、飛び出た歯とインプラントが当たって、まともに噛むことが難しいのです。どうしても矯正治療をしたくないのであれば、「飛び出たぶん歯を削って短くする」という手もありますが、歯の神経を抜いて被せ物を入れることになるため、歯の寿命が縮まってしまいます。 Q、1番奥の歯なら、抜けた後そのままでも大丈夫? A 、最奥の歯が抜けたときの影響は、他の歯が抜けたときよりは少ないです。歯は後ろ(奥歯のほう)には傾きにくいので、そちらに倒れることは少ないですが、歯が飛び出てくるリスクはあります。また、噛む力を支える歯が減ってししまうことになるので、他の歯が破損するリスクは間違いなく上がります。経過を診させていただくために、定期的な受診をお願いします。 Q 、すぐにはどうやって補うか決められないときはどうしたら良いでしょうか? A 、できるだけ早く、歯を失った場所に歯を補う治療を受けたほうがよいとはいえ、なかなか決められないこともありますよね。そうした時は、歯のスペースを保持する処置をしてもらうのがおすすめです。例えば、前歯なら、コンポジットレジンで作った歯で応急的に隙間を埋める「レジン隙」というのがあります。歯みがきがしにくいのと、経年的に着色していくのが難点ですが、隣の歯を削る必要はなく、意外と長持ちします。ただし、噛む力をかかる奥歯にはむかず、パキッと取れてしまいます。奥歯の場合は、一時的な部分入れ歯をつくって、それを使いながら、本格的な入れ歯やインプラント、ブリッジをら入れることを検討されるのが良いでしょう。 ◎とてもこわい「破折」 歯を失う原因としね、歯の破折も見過ごせません。歯を1本失うと、次のケースの破折が起きやすくなります。 ①反対側の歯の破折 片側の歯が1本なくなると、反対側で噛むようになります。すると力のかかりかたが過剰になり、そちらの側の歯が欠けたりわれたりするリスクが高まります。 ②隣の歯の破折 歯が1本なくなった場所では、その隣の歯への負担が高まります。噛んだ時の力をより少ない歯で受け止めなくてはならなくなるため、隣の歯が破折しやすくなります。 ・破折は、神経を除去した歯ほど起きやすいです。とくに、第二大臼歯を失って、第一大臼歯が神経のない歯だった場合、破折のリスクが跳ね上がります。 ・むし歯が歯の内部の神経(歯髄)にまで広がると、神経を除去しなくてはなりません。ですから、むし歯予防が破折予防になるともいえます。 ・そのほか、お年を召したかたは、若いころと同じように、かたいものをたべるのは控えた方が良いでしょう。 【歯を失ったら補う治療のご相談を。】 ここまでお話ししてきたように、歯を失った場所を長く放置してしまうと、歯を補う前に矯正治療が必要になることがあったり、歯並び全体に影響をおよぼしてしまったりと、予期せぬ事態が起きる可能性があります。歯を失ってしまったら、速やかに歯医者さんと相談して、補う治療を考えていくのが良いでしょう。また、それに加えて、むし歯や、歯周病を予防して、これ以上歯を失われないようにしていきましょう。歯が倒れてきたり、飛び出てきた場所は磨きにくくなりますので、むし歯と歯周病、両方のリスクが高まります。全てにおいて共通するお話ですが、お口に何か悪いことが起こりはじめている予兆をいちはやく察知して、対応できるように、痛みや違和感のないときから定期的に歯科に通っていただければと思います。歯科での指導や、定期検診を受けつつ、歯の健康を維持していきましょう。 歯の根っこのお話し。 むし歯が神経まで広がってしまったとき、歯を救う最後の手段となる「歯の根の治療」。実はこれはとても難易度が高く、大変な技術と労力を要する治療なんです。狭くて深い歯の根っこの治療について、お話ししましょう。 歯の根の中の根管内から、細菌感染を起こした歯髄(神経)を可能な限り除去しますが、歯の根の中はとても複雑な形をしていますので、器具が入らないところや、除去した後の削りかすなどがまだ歯の根の中に残っている場合がほとんどです。削りかすは細菌に汚染されてますので、これが根管の内部に残ったままだと、また細菌が繁殖して炎症をおこし、痛みを生じさせます。ですからしっかり薬液を使って洗い流します。といっても高圧洗浄機のように勢いよく水流を当てるのは痛いですから、注射器のような器具で、薬液をチュッチュっと根管内に行き渡らせます。根管ごとに何回かを繰り返して、削りかすが浮いてこなくなったら完了です。 最近の活動を抑える「消毒」 洗浄が済んだら、根管の中に消毒薬を詰めます。「消毒」ときくとマキロンのような液体の消毒薬が思い浮かぶと思いますが、根管内に詰める消毒薬はドロっとしたジェル状のものが多いのです。この消毒薬で根管内に残った細菌を殺す、、と言いたいところですが、残念ながら消毒薬の効果はそこまで大きくありません。これは器具などで取りきれなかった感染部分の細菌を抑え込むためのものです。 「仮封」で一区切り。でも油断は禁物。 消毒薬を詰めた後は、かりのふた(仮封)をします。かりのふたの目的は、外部からの細菌が入ってこないようにすること、応急的に噛めるようにすることなどです。かりのふたは、むし歯治療でよく使われているコンポジットレジン(しろいつめもの)とは違い、外れやすい材料である程度弱く接着されています。とりやすい材料にすることで次の治療でかりのふたを外す際に、残ってる歯を傷つかないようにあえてそうしているのです。 そこから土台をたてて、型取りをして、、と歯の根っこの治療は来院回数がかかる治療です。 ここまで頑張られた患者さんでも悲しいことが起こってしまいます。それは、患者さんが次の治療を先延ばしにしてしまうことです。 かりのふたはあくまでもかりのものになります。もつのはせいぜい2週間くらいと言われています、かりのふたは外れやすく、劣化もしやすいです。主な痛みの原因である壊死した歯髄が除去されて痛みがなくなった、痛みがひいたからといって、完全に治ったわけではありません。そのまま放置してしまうと、そこからまた細菌が根管内部に入り込んでしまい、治療がいちからやり直しになってしまいます。お仕事の都合や何かしらの事情でしばらく歯医者へ来れなくなる事情のあるかたはあらかじめかりのふたを少し強度のあるものに一時的に変更したりなど対応できますのでかかりつけの歯科医院にご相談ください。