諦めるのはまだ早い! 歯周組織再生療法で救えるかも|いまもと歯科クリニック|奈良県葛城市の歯医者

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諦めるのはまだ早い! 歯周組織再生療法で救えるかも

いまもと歯科クリニック
歯科衛生士 和田

諦めるのはまだ早い!
歯周組織再生療法で救えるかも

噛めるって元気の源ですよね。

何も異常がないときから歯医者さんに通うのが理想的。とはいえ、久しぶりに歯料を受診したら、「歯周病になっていて、しかもあこの音が大きく失われるほど悪化していたのがわかった!」なんて患者さんもときにはいらっしゃいます。
歯周病が進行すると、あごの骨をはじめとした歯のまわりの組織が失われていきます。
それらの組織は歯を支える役割を担っているため、大きく減ってしまうと歯の寿命に影響が。では一度減ってしまったらもうどうしょうもないのでしょうか?
そんなことはありません。「歯を残したい」という患者さんの救いとなるうる「歯周組織再生療法」という治療法があるんです。

歯周療で骨がひどく減った歯
どうにかして残したい!
歯用が進行してんなとき声などの歯を支える組織が大きく失われてしまった。
そんなときに救いとなる治療法があるんです。

歯周病により歯を支える組織が失われる歯周病の原因は、プラークという「細菌のかたまり」です。プラーク中の歯周病菌の感染により、歯のまわりの組織に炎症が起きて、あごの骨などが失われていきます。
プラークは一度取り除いても、わずか数日でまた形成されます。ですから歯周病の治療では、まず患者さんに歯みがきを改善していただくことが重要です(ちなみに、歯石はプラークが石灰化したものです)。歯みがきの改善ができたら、歯ブラシでは落とせない、歯周ポケット内のプラークや歯石の除去を歯科で行います。
歯周病が軽度の場合はそれで改善することが多いものの、器具が届かないほど歯周ポケットが深くなっているなら、歯ぐきを切開してポケットの奥にあるプラークや歯石を取り除きます(フラップ手術)。

失われた組織を取り戻す
「歯周組織再生療法」
ポケットの奥のプラークや歯石が除去されれば、炎症は治まります。

しかし、それまでに歯のまわりの組織が大きく失われていると、歯を支える骨などが失われているせいで、その後の歯の維持が難しくなります。
このとき、歯を支える組織の再生を目的にフラップ手術とあわせて行われるのが「歯周組織再生療法」です。

特殊な再生材料などを組織の失われた部分に入れて再生を促す治療法で、再生には時間がかかり、組織の久損の状態によって向き不向きはありますが、うまくいけば歯の寿命を延ばせる可能性があるのです

Question
歯周病が悪化して
歯を支えるあごの骨が大きく減っている歯があります。
どうにかこの歯を長く残したいんですが先生、何か手はないでしょうか?
もちろん、歯みがきや定期受診は欠かしません!

Answer
そのような場合歯を支える組織を再生させる
「歯周組織再生療法」があります。
組織の欠損の状態によって向き不向きはありますが、歯のまわりの組織が再生することで
歯の寿命が延びる可能性が高まります。 

歯周病になると歯を支える組織はどうなる?
歯周病になる前の健康な状態と歯周病が進行した状態を比較してみましょう。

細菌の侵入を防ぐため
からだが自らを破壊する

健康な状態の歯のまわりの組織を示しています。歯と歯ぐきのすき間は浅く、あごの骨も損なわれていません。
歯周病がかなり進行した状態。歯の根にプラークや歯石が多量に付着し、深い歯周ポケットができています。プラークからは歯周病菌が出てきて、酸や毒素をつくって歯を支える組織を破壊しながら、歯ぐきの表面にくっつき体内に侵入していきます。歯周病菌が体内に侵入してくると、感染から身を守るために「免疫反応」が起こり、歯ぐきが腫れたり血が出たりします。
人間のからだは、細菌の感染からからだ本体を守るのを優先します。
そのため、歯周病菌がからだの奥深くに入って感染を起こさないよう、からだが骨を溶かす物質やコラーゲン分解酵素を出して、自ら組織を破壊していきます(感染源から一定の距離を保つために、安全な陣地を後退させていくのです)。その結果、あごの骨が溶けてなくなっていき、歯周ポケットが深くなります。

歯を支える隠れた存在
「歯根膜」と「セメント質」
「じゃあ、あごの骨を再生させるのが歯周組織再生療法なんだ!」と思うかもしれませんが、それは半分だけ正解です。歯を支えているのは、骨だけではないのです。歯の根とあごの骨のあいだには「歯根膜」という組織があって、これが歯の根の表面にある「セメント質」の助けを借りて、歯と骨を結びつけています。


歯根膜のなかには血管や神経が入り込んでいるので、歯や骨への栄養の通り道になるほか、侵入してきた細菌への免疫反応を起こします。また歯根膜は、噛むときの力をクッションのように受け止めて分散させる、神経や筋肉の反射によって歯を守る、咀嚼を助けるなどの働きもあります。
ですから、歯の寿命には歯根膜の存在が重要です。再生療法は、あごの骨だけでなく、歯根膜と、それが歯の根に付着するのを助けるセメント質の再生も目的としているのです。


\こんなにスゴイン!歯根膜/
*  歯の根とあごの骨を縫い目のようにつないで歯を支えます
(「歯周じん帯」とも呼ばれます)。
*  歯や骨への栄養や免疫物質の通り道となります。
*  噛んだときの圧力を分散させるほか、噛む強さを感じるセンサーにもなります。

歯周組織再生療法
それではいよいよ本題。
歯周組織を再生する治療法をご説明します。

エムドゲイン®ゲル
(ストローマン・ジャパン/ヨシダ)
歯の根に塗布して使用する
ジェル状の歯周組織再生材料。ジェルに含まれるエナメルマトリックスタンパクの刺数により、歯を支える組織の細胞の再生が促進されます。

歯周組織再生療法ってどんな流れ?
再生療法にはおもに、ジェル状の再生材料を用いる方式や、お口のなかのほかの場所から採取した骨を移植する方式、人工の骨補填材を用いる方式、薄い膜状の材料を用いる方式、それらを組み合わせる方式があります。
ここでは、比較的シンプルな術式でよく使われる「エムドゲイン®ゲル」(ジェル状の再生材料)を用いる方式を例にあげてご説明しましょう。

重度の歯周病になっていた状態から、患者さんの歯みがきの改善や、歯科での歯周ポケット内の歯周基本治療(で可能な限りプラークや歯石を取り除きました。歯ぐきの腫れが引いているのがわかりますね。この段階になってはじめて、歯周組織再生療法に進むことができます。

歯ぐきを切り開いてめくり、歯の根を露出させてから、外から行う歯周基本治療だけではポケットが深くて除去し切れなかったプラークや歯石を、内側からも徹底的に取り除きます(フラップ手術)。その後、再生材料が付着しやすいように歯の根の表面を処理してから、エムドゲイン®ゲルを塗布します。シリンジでジェルを歯の根の下から上へと塗りつけます。

歯ぐきを元通りの位置に戻して縫合します(歯が動<場合は周囲の歯と固定します)。歯ぐきとあごの骨、歯の根のあいだのスペースにはほどなく血餅ができますが、この血餅がじつはとても重要。
血餅と聞いて「ただの血のかたまりでしょ?」と思うかもしれませんが、血餅は蝶でいうサナギのようなもの。再生療法は、このサナギを蝶にふ化させる、つまり歯を支える組織に変化させることが目的なのです。

工ムドゲイン®ゲルの作用で、歯の根に残っていた歯根膜の細胞が刺激されて、血餅が歯根膜やセメント質、あごの骨に変化していきます(歯根膜の細胞には、さまざまな細胞に変化できる間葉系幹細胞があります)。
うまく再生できたか治療の結果がわかるのは8~9ヵ月後。歯周病になる前の状態に元通りとはいきませんが、歯を支える組織のボリュームが回復しているのがわかりますね。再生したあごの骨は、2~3年かけて成熟していきます。

再生がうまくいかないと血餅が流れてしまうこともあれば、血餅のスペースに歯根膜やあごの骨より速く、歯ぐきのみが再生されてしまうこともあります。
その場合、歯ぐきはペタッと磁石のように歯にくっついているだけなので、歯根膜とセメント質、あごの骨のトリオにくらべ歯を支える力は弱いです。
歯ぐきだけが先に再生されるのを防ぐために、エムドゲイン®ゲルには歯ぐきの再生を抑制する作用もあります。

治療のあと
これには気をつけて!
再生療法後の流れと、治療を受けられたあとに気をつけていただきたいことをまとめました。

抜糸までの2週間は数日おきに来院をまず、治療当日から約2週間後の抜糸までに気をつけていただきたいのは、治療した歯とその周囲で噛まないことと、治療した歯の歯みがきをしないこと。
治療したところはとてもデリケートなので、食べ物をそこで噛まないことはもちろん、歯ブラシを当てるのもNGです。歯みがきのかわりに殺菌作用のある洗口液でケアをしましょう。歯みがきができない分、歯科でクリーニングをしますので、週に2回は必ずご来院ください。
またこれは治療前から共通しますが、タバコもNG。喫煙者は組織の再生量が半分になるという報告がありますので、再生療法を受けるなら前もって禁煙をお願いします。

治療結果の確認は8~9カ月後
抜糸後は、毛先のやわらかい歯ブラシでやさしく歯みがきを再開していただきます。治療したところに細菌が入り込むと治療が台無しになってしまいますので、このときも1週間に1回はチェックとクリーニングにご来院ください。
治療がうまくいったかを最終確認するのは8~9ヵ月後。歯周病の検査のときに使う細長い器具を歯と歯ぐきのあいだに差し込み、組織がしっかり歯にくっついているかを確認
します。ねらいどおり歯根膜とセメント質が再生しているなら、器具が深く入り込むことはありません。
8~9ヵ月は長いですが、治療の成功のためにぜひご協力くださいね。

Question
再生療法って
こういうやりかたなんですね。
治療を受けたあとは、どんなことに気をつければいいでしょう?

治療後は
抜糸までは数日おきに、それから1週間に1回、数週間に1回と間隔を伸ばしつつ
定期的に経過のチェックと歯のクリーニングをさせていただきます。
結果がわかるのは8~9ヵ月後。
長い期間ですが、NGなことに気をつけてもらいながら、ご来院いただければと思います。


治療前と治療後

タバコはNG。
タバコの煙に含まれるニコチンや一酸化炭素は、歯のまわりの組織への酸素や栄養の供給を妨げます。また、免疫の働きを狂わせたり、傷の治りも悪くさせるので、再生療法の大敵です。歯周病の治療の効果も落ちるため、タバコを吸われているかたは前もって禁煙をお願いします。
タバコはからだだけでなくお口にも百害あって一利なし。加熱式タバコも同様ですよ。


治療後
噛むのはNG。
再生療法を行ったところは、とてもデリケート。周囲の歯と固定したとしても、強い力が加わると再生中の組織が壊れてしまうことがあります。抜糸が終わって歯ぐきが治癒するまでは、食事のときはできるだけそこで噛まないようにしてください。

再生したあとはメインテナンスが必須!
再生療法がうまくいったあとも油断は禁物。
治療した歯をもたせるには定期的に通っていただく必要があります。

長くもたせるにはメインテナンスが必須
治療の結果が明らかになるまでに8~9ヵ月と聞いて、長いと思われるかたもいるかもしれません。しかし、再生療法はもともとあった人体の構造を回復させる治療のため、どうしても時間がかかるものなのです。
実際、新しくつくられたあごの骨が成熟するには、2~3年はかかるといわれています。
ぶじ歯を支える組織の再生が確認できたら、治療を行った歯を長くもたせるために、ぜひ歯科のメインテナンスに通いましょう。
治療したところは、もともと再生療法が必要なほど歯周病が進行していた場所ですので、治療の経過を見守り、まさかの歯周病の再発を防ぐには、定期的な歯科受診が何より大切です。最初の歯周病の状態が悪くても、患者さんが歯みがきをしっかりされていて、メインテナンスに欠かさず来ていただければ、治療を受けた歯が30年もったという報告もあります。
生まれ変わったのは歯を支える組織だけじゃない
長くたいへんな再生療法を乗り越えられた患者さんは、歯みがきのレベルも、お口の健康への意識も、治療を受ける前から生まれ変わっているはずです。
治療が終わったからと言って、それで歯科へ通う習慣を終わりにするのはもったいないことです。治療のあとも歯科とのお付き合いをぜひ続けて、健康を取り戻したお口を長くもたせてくださいね。

教えて!歯医者さん
Q&A
治療を受けたあとになってわいてくる不安。
歯科医院に対する素朴な疑問。
先生には面と向かって聞きにくい、でもどうしても気になる!
そんな皆さんの本音の疑問にお答えします。

久しぶりに歯科医院に来たけど、持病や飲んでいる薬について教えるように言われたよ。
でもあまり言いたくないし、薬の名前は覚えてないしなあ。

患者さんの状態に配慮して歯科治療を行うためには、おからだの病気や服薬を教えていただくことがとても大切です。
使用されているお薬の把握には「お薬手帳」が便利ですよ。

歯科治療とからだの病気は関係ない」と思うかもしれませんが、そんなことはありません。
とくに高血圧症、糖尿病、心臓病、
骨粗鬆症、気管支喘息、甲状腺疾患などの持病をもつかた、ステロイドや抗がん剤をご使用のかた、胃腸の治療を受けているかたなどは注意が必要です。現在のおからだの状態とともに、使用されている内服や注射のお薬がどんなものかを教えていただくのは、私たちにも患者さん自身にもとても大事なことなのです。
といわれても、いくつかお薬を飲んでいて、どれが何の薬なのかわからなくなった。ーなんてこともあるかもしれませんね。それを防ぐには、「お薬手帳」が便利です。いつ、どこの病院から、どんな薬を出してもらっているかが一目瞭然です。
歯科治療中は誰でも緊張して血圧が上がりますが、高血圧で血圧を下げる薬を飲んでいる場合、自己判断で飲むのをやめると、治療中に血圧が急上昇して危険なことがあります。
歯石を取るなどの歯周病の治療や抜歯を受けるとき、血液サラサラの薬を飲んでいるかたは血が止まらなくなることがありますので、ぜひ教えてください。心臓や血管の手術をされたかたや糖尿病のかた、ステロイドをお使いのかた、抗がん剤治療を受けているかたは、事前に抗菌薬をお飲みいただくこともあります。
ほかには、骨粗鬆症の薬をお飲みだったり、注射をしてもらってはいませんか。最近では半年に1回注射をすれば済むものもあり、これはお薬手帳にも記載されませんので、絶対に教えていただかないといけません。非常に低い確率ですが、抜歯などの傷をきっかけにあごの骨が壊死しやすくなるといわれているのです。
治療中だけでなく、治療の前と後にも持病やお薬は関係します。むし歯を削らなければいけないときや抜歯になってしまったときは、治療の前に局所麻酔薬を使うことが多いです。麻酔薬にはさまざまな成分が含まれています。その成分にアレルギーがあるかもしれません。アレルギ一体質ではないですか?鼻炎や花粉症もアレルギーの一種です。
糖尿病のかたは、治療の前後に食事を抜いたり薬をやめると、逆に血糖値が不安定になり、意識を失うなど危険なこともあります。飲み薬ではなくインスリン注射を受けているかたも必ず教えてください。
また、甲状腺の病気でお薬をお飲みの場合は、麻酵薬の成分で脈が速くなりやすいです。インジンなどのうがい薬も使わないほうがいいという説もあります。
くわえて、治療後には痛み止めを飲みますよね。気管支喘息のかたは今までどんな痛み止めを使っていたかも教えてください。胃腸の悪いかたには使えない種類の薬もあります。
私たち歯科医師は、処方されている薬の記録や所見から患者さんの状態を把握し、治療状況に合わせて最善の歯科医療を提供できるよう配慮しています。歯科にも必ず、お薬手帳を保険証と一緒にお持ちください。