顎関節症について|いまもと歯科クリニック|奈良県葛城市の歯医者

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顎関節症について

顎関節症について

奈良県葛城市いまもと歯科クリニック受付の芦髙です。

みなさんは、顎関節症についてご存知でしょうか。顎関節症は、「顎関節の内部」か「顎関節を覆う筋肉」に異常が起きた時に発症します。
顎関節の構造を簡単に説明すると、上顎骨のくぼみと下顎骨の先端(下顎頭)のあいだにある関節です。靭帯(関節包)で支えられていて、すき間をクッションとなる組織(関節円板)と液体(滑液)が満たしています。そして、これを筋肉(咀嚼筋や咬筋)が覆っています。

そもそも、これって顎関節症?
①「音がする」
口を開けたときに、顎関節から「カクッ」「コキッ」と言った音がする
②「痛みがある」
口を開けたときや噛みしめたときに、ズキッと鋭い痛みやズキズキと重い痛みがある
③「口が開かない」
口が大きく開けようとしても、引っかかったように顎が動かない
このうち1つ以上の症状があると、顎関節症といえます。ですが、この3つ、「重症度」は違います。

症状別 どう治す?顎関節症
①「音がする」タイプ
◎「音がするだけ」なら治療は必要なし!
口を開けたときに「音がする」というのは典型的な顎関節症の症状ですが、1番軽度の症状ですので、過度に心配される必要はありません。
また、とくに治療の必要はありません。
◎症状に変化が出てきたら歯医者さんへ!
「痛みがある」「口が開かない」といった症状が出はじめたら重症化しています。
こうした症状が出てきたら、できるだけ早く歯科を受診してください(遅くとも1週間以内)。
重症化させないためには、生活習慣の改善を心がけましょう。
②「痛みがある」タイプ
◎なるべく早く歯医者さんへ!
「口を開けたり噛みしめると痛みがある」、または「今まで音がするだけだったのが、痛むようになった」場合は、できるだけ早く歯科を受診してください(遅くとも1週間以内)。
音が大きくなった、小さくなったなどは関係ありません。
歯科では、痛みの原因が顎関節の内部にあるのか、顎関節を覆う筋肉にあるのかを判断してから、指導や治療を行います。
◎様子を見るのは「1週間」まで!
痛みや口が開かないという症状は、一時的な筋肉の炎症が原因のこともあります。寝違えたり、顎関節に無理をさせて、顎関節まわりの筋肉が傷んでしまったのですね。
一時的な筋肉の炎症なら、医学的には約48時間で治ります。ですか53日あれば、完全に治らなくとも症状は落ち着くでしょう。
3日経っても症状が治まらない、大目に見て1週間経っても痛い、ロが開かないというなら、様子を見るのはそこでやめて、歯科を受診してください。「顎関節症は、2週間以内に治療を受けると早く治る」というデータもあります。
これが1ヵ月や2ヵ月経つと、重症化し治りにくくなります。たとえば関節のまわりの筋肉が傷んでいる場合、慢性的になった痛みを取るのは非常にたいへんで、時間もかかります。
◎「痛いことはしない」が大原則!
顎関節と筋肉、どちらが原因にしろ、まず患者さんにしていただくことはひとつです。
それは、「痛みが出るような顎の動きはしない」
「痛いなら口を開けないで、無理はしないで」
これが顎関節症の治療方針のひとつ、ゴールデンルールです。
筋肉を傷めたら安静にしますよね。
それと同じです。
安静にしていても痛みが引かなければ、原因ごとに違った治療を行います。
・痛みの原因が「顎関節」にある
安静にしても痛みが引かないなら、鎮痛剤を処方したり、顎の負担を減らすマウスピースをつくります。
くわえて、顎関節の内部を注射で洗浄したり、内視鏡での手術を行うこともあります(重症の場合)。
・痛みの原因が「筋肉」にある
安静にしても痛みが引かないなら、鎮痛剤を処方したり、顎の負担を減らすマウスピースをつくります。
マウスピースはおもに就寝中に装着していただきます。
③ 「口が開かない」タイプ
◎なるべく早く歯医者さんへ!
大きく口を開けられない」、または「今まで音がするだけだったのが、口が開かなくなった」場合は、できるだけ早く歯科を受診してください(遅くとも1週間以内)。音が大きくなった、小さくなったなどは関係ありません。「口が開かない」タイプの場合、ほぼ顎関節の内部に問題が起きています。
◎やってはいけない行動!
・わざと音を鳴らす
口を開けたときに音がする人がやってはいけないのは、気になるからとカクカク音を鳴らすこと。
ふつうに食べているときの顎の運動は生理的な田等という運動です。でも鳴らすというのは鳴らすことが目的ですから、顎関節の動きは必ずしも食べるときの運動と同じではありません。そのいびっな動きは、さらに関節円板のズレをまねくなど、悪い駅響をもたらします。柔軟体操にはなりません。
・顎の筋トレ
顎関節も筋肉と同じように、鍛えたら強くなると思っているかたがいます。でもこれは大きな間違いです。無理して硬いもの(スルメやジャーキーなど)を噛んでも、成長期が終わった人には影響はありません。むしろ顎関節を傷めてしまいます。
たとえ成長期の人であっても、過度の負担をかけるのはよくありません。
◎施術や開口訓練!
顎関節では、上顎骨と下顎骨のあいだに「関節円板」という平べったい組織があります。
口を開いて、下顎骨が動くときにこの組織がクッションのような役割を果たすおかげで、私たちはスムーズに口の開閉ができます。
しかしこれが何かの拍子にズレて顎の動きを阻害するようになると、口が開かなくなります。
イメージとしては、歯車がズレて回らなくなってしまったというのが近いですね。
歯科では、ズレた関節円板による動きの阻害を解消する治療(マニピュレーション)を行います。
※患者さんの状態によっては、この治療はできないこともあります。
マニピュレーションが難しかったり、その後も開けにくさが残る場合には、開口訓練を行います。少しずつリハビリして開けられるようにしていこう、というのがこの方法です。固くなった関節をストレッチでやわらかくするイメージです。
開口訓練の例
①こめかみに手を添え、顎を右に動かします。
②顎を左に動かします。
③顎を前に突き出します。
④大きく口を開けます。
①~④を10回繰り返すのを1セットとして、1日に5セット行います。
顎を動かすときはゆっくり大きく。
「筋肉が伸びている」イメージを大事に。

顎関節症に影響する習慣 チェックリスト
日常の生活習慣が、気づかないうちに顎関節症のリスクになっていることがあります。顎関節症の予防や症状改善のために、変えられる要因を変えていきましょう。
⬜︎ スマホを見る時間が増えた
⬜︎ 猫背気味である
⬜︎ オンライン(リモートワーク)中心の生活をしている
⬜︎ よく頰づえをつく
⬜︎ うつ伏せ寝の習慣がある
⬜︎ バイオリンや吹奏楽器を演奏する
⬜︎ 気がつくと、上下の歯がくっついている
⬜︎ 家族から寝ているときの歯ぎしりを指摘されたことがある
⬜︎ 朝起きると、頰から下顎のえらにかけてだるさがある
⬜︎ 歯がすり減ってきた(歯が短くなった)

ここがポイント! 生活習慣と顎関節症の関係
︎⬜︎ スマホを見る時間が増えた
⬜︎ 猫背気味である
⬜︎ オンライン(リモートワーク)中心の生活をしている
⬜︎ よく頰づえをつく
⬜︎ うつ伏せ寝の習慣がある
⬜︎ バイオリンや吹奏楽器を演奏する
・・・にチェックが入ったかた
スマホやパソコンを見るときに、下を向いたり、変勢や猫背になっていませんか。また、頬づきやうつぶせ裏の開はありませんか。これらは顎関節への負担となります。
部活動や趣味で長時間バイオリン(あごで楽器を支える)や吹奏楽器口で楽器をくわえる)を演奏されているかたも、顎関節症になりやすいです。

⬜︎ 気がつくと、上下の歯がくっついている
・・・にチェックが入ったかた
ものを食べていないときは、上下の歯のあいだはわずかに開いているのがふつうです。しかし無意識に上下の歯を噛み合わせることが癖になっているかたもいます。
これは「TCH」(tooth contacting habit:歯列接触癖)と呼ばれます。
改善には、ご自身にTCHがあるのを認識することが第一歩。
上下の歯が当たっていることに気づいたら、意識的に離すようにしましょう。

⬜︎ 家族から寝ているときの歯ぎしりを指摘されたことがある
⬜︎ 朝起きると、頰から下顎のえらにかけてだるさがある
⬜︎ 歯がすり減ってきた(歯が短くなった)
・・・にチェックが入ったかた
睡眠中の歯ぎしりや噛みしめは、顎関節症の大きな原因です。
朝起きると顎がだるい日が続く、歯がすり減ってきたというのは、典型的な歯ぎしりや噛みしめの症状です。
歯のすり減り(吸耗)をはじめ、舌が歯の形にへこむなど、睡眠時の歯ぎしりの影響は口の中に顕著に現れます。
歯医者さんからの指摘で、気づくかたもいます。
歯ぎしりは、歯医者さんでつくってもらったマウスピースを睡眠中に装着すると、緩和されることがあります。

顎関節症に影響する習慣 変えられるものから変えていこう!
うつぶせ寝や睡眠中の歯ぎしり、TCHの習慣は、そうそう変えられるものではありません。顎関節によくないからといって、「部活動や趣味をやめよう」ともいきません。ですので、「自覚しやすい・変えようと思って変えられる要因」から変えていきましょう。
意識して変えることが可能な要因のひとつが、「スマホ」です。
顎関節に悪い姿勢(前傾姿勢や猫背)でスマホを見ていて、しかもそれが長時間続くというのは、顎関節症の大きなリスクとなります。
ただし、「スマホを使うのをやめよう」ということではありません。いまはスマホのない生活は不可能ですので、見るときの姿勢の改善や、15~30分ごとにインターバルを置くなどを意識してもらえばと思います。

女性の顎関節症は20代や40代に多かったのですが、ここ数年は30代の子育て世代のかたに目立ってきました。顎関節症のお母さんたちに生活習慣の変化はなかったかと聞くと、小さい子がいるから家にいることが多くなり、「スマホをする時間が増えた」。子どものそばにいながら2時間、3時間と見ているそうです。
そうしたお母さんには、上記でご紹介した姿勢の改善や、定期的にインターバルを置くことをすすめています。たとえばスマホのリマインダー機能やアラーム機能を使って、15
分ごとに通知するように設定。15分経ったらスマホを1回置いて、休憩や家事、首や肩を回すストレッチをしてもらいます。

顎関節症 ミニ相談所

Q.「音がする」だけなら治療は必要ないそうですが、本当にそれでいいの?
A.たとえばひざの関節ですと、屈伸したときに正常な人は痛くないし、音もしません。
ですが、ときどきパキッと音がする人がいます。その人に対して、「今すぐ整形外科に行って見てもらわないと、ひざの手術を受けないと!」とはならないですよね。たしかに音は聞こえるし気になるかもしれないけれど、気になるもの=病気、つまり治療が必要なものとは限りません。
顎の関節も同じで、音はするけど痛みはなく、しっかり伸びたり縮んだりするならそれは「ふつう」です。治療はしなくてもいいのです。日本顎関節学会も、「音がするだけなら積極的な治療を行う必要はない」という方針を出しています。

Q.顎関節症になりやすい人になりにくい人がいるのはなぜ?
A.顎関節症が発症するかどうかは、その人の顎関節の“強さ”と、顎関節に悪い習慣(原因)をどれくらいもっているかで変わります。
その人が耐えられる許容量をコップになぞらえた「コップ理論」で説明しますと、人はそれぞれ、症状が出るまでには許容量があります。
そこに顎関節に悪い習慣(原因)という“水”が注がれていき、限界を超えて水があふれると、「顎関節症の発症」となります。
顎関節に悪い習慣が多いほど、注がれる水の量は増えます。
生まれつき顎関節が弱い人はコップの容量が小さく、顎関節が強い”人はコップの容量が大きいです。

Q.顎関節症の治療のために「噛み合わせの治療」をすることはあるの?
A.歯科の監修していないウェブサイトのなかには、「顎関節症の治療には、噛み合わせい
(歯を削る)が必要」「矯正治療が必要」と書かれているものもありますが、これは古い、誤こ満報です。
原則的に、初期治療の段階から、そうした不可逆な治療を行うことはありません。

Q. マスクと顎関節症って関係ある?
A.マスクの圧迫が顎関節にダメージを与えると考える人もいますが、マスクが直接、顎関節症を起こすことはありません。
マスクが息苦しいからと、顎を変なふうにずらして息を吸う習慣が顎関節への負担になったり、口を大きく開ける機会が減っていたことで、重症化するまで顎関節症の症状に気づかなかった、ということは考えられます。

Q. 顎関節症かなと思った場合、かかりつけの歯医者さんがないときはどこで診てもらえばいいでしょう?
A.地域の歯科医師会のウェブサイトが情報源として有益です。
事前に歯科医院に電話で問い合わせ、受診が可能かどうか歯科医院の多くは予約制です)確認するとよいでしょう。
また、日本顎関節学会のウェブサイトも参考になるでしょう
(https://kokuhoken.net/jstmj/certification/list.html)

よくいわれますが、顎関節症は、患者さん自身が治していくものです。
これまで説明してきた通り、顎関節症は治療が必要ない場合、生活習慣で改善できる場合、歯医者さんへ行ったほうがよい場合など様々な場合があります。
「顎関節症の治療」をひとつの舞台とすれば、治療の主役はあなた。しかし、その主役がどう演じるべきかを示してくれるのが歯医者さんです。
ひとりで演じるよりも、プロの監督・指導のもと進めていくのが安心ですよね。いっしょに治していきましょう。
そのため、痛みがあるタイプのかたや口が開かないタイプのかたは、自己判断で終わらせず、まず歯医者さんへ相談して判断を仰ぎましょう。顎関節症への正しい対処は、不安や痛みを取り除くことができます。
また、日常生活の中でスマホの使い方や姿勢を見直すことも顎関節症のリスクを減らすことができます。現代の中でスマホは切っても切り離せないツールではあるので、少しずつ習慣づけていきましょう。
顎関節症も、むし歯や歯周病同じく早めに対処するほど、症状の改善が速やかです。なにごとも、重症化する前に予防することが大切です。