早期発見!注意したい永久歯の生え方 口・あごの発達が著しい学童期。この成長期の変化にともなってしばしばみられるのが永 久歯の生え方の異常です。発見が遅いほど対応が困難になり、さらに放置すればその後の 成長に悪影響を及ぼすこともあります。定期的に歯科医院で診てもらい早めの対応がカギ です。この特集では永久歯の生え方の注意点や処置についてお話します。 ・永久歯が生え変わるのはいつ? 永久歯の萌出時期は個人差が大きいです。年長さんの後半になると多くのお子さんの下の 乳切歯がグラグラし始めてきます。いよいよ乳歯の下に隠れていた永久歯が顔を出そうと しています。乳歯は上下合わせて 20 本ですが、永久歯になると8本加わり。28 本(親知ら ずを除いて)。第 2 大臼歯の萌出が 12~13 歳ごろ(小学生いっぱい~中 1 まで)に終わりま すから、長い年月をかけて生えそろっていくわけです。生える時期はお子さんによってずい ぶん違います。「うちの子は遅いの?」心配される方もいるでしょうが平均的な歯の生え始 め(萌出)の時期は個人差があり、成長がゆっくりなだけのこともありますから、それほどに 心配はいりません。ただ、歯の萌出を妨げる要因が潜んでいることもあるため、歯科医院で の見極めが大切です。特に萌出時期に左右の歯で差がある場合は要注意です。 ・生え変わり時に潜むトラブル! 乳歯から永久歯へのスムーズな生え変わりとは、乳歯が抜けてほどなくして永久歯が生え てくることです。過程を説明しますと、歯ぐきの中で乳歯に続く永久歯が乳歯の根を刺激 し、刺激を受けた乳歯の根が短くなって抜け落ち、永久歯が歯ぐきから現れるというもの です。しかし、あごの成長が小さかったり、大きな乳歯の虫歯などがあったりすると生え 変わりがうまくいかない事があります。たとえば乳歯の根が短くならずなかなか抜けなか ったり、そのため別の場所から永久歯がでてきたり傾いて生えてきたり、永久歯が歯ぐき の中にとどまってしまうことがあります。また永久歯が多い過剰歯逆に少ない先天欠如と いったこともあります。このように歯の生え方変わり時期には様々な問題が潜んでいたり します。いずれも歯並びやかみ合わせに問題があります。 生え変わり注意ポイント⓵乳切歯の残存と下あごの切歯の舌側転位 乳歯が残ったまま次の永久歯が生えてきて、一時的に2枚歯になっている状態のことで す。下の前歯でよく見られます。永久歯が内側から生えてくること自体は異常ではありま せんが、乳歯が長くとどまる場合は、注意が必要です。乳歯の根が溶けていれば、舌側か ら出てきた永久歯によって押し倒されるようにして、短期間のうちに乳歯は抜け落ちま す。しかし、乳歯が長くとどまる場合では食べ物がつまりやすく、歯磨きがしにくいとい った問題があるほか、永久歯の萌出スペースが小さく歯並びに悪影響を及ぼすシグナルで あることも多く、注意が必要です。治療法としては2枚歯でも乳歯がグラグラして痛みが なければ、乳歯の根が短くなり、自然に生え変わると思われますし、スペースが十分にあ れば舌の力で次第に前方へ出ていきます。このような場合は経過をみて抜けるのを待ちま す。一方、乳歯がグラグラせず、レントゲン撮影で歯の根がまだ長いことがわかれば、歯磨きのしやすさなどを考慮した早期に乳歯を抜歯することもあります。いずれの場合も歯 並びや嚙み合わせの状態により、矯正治療を検討することもあります。 生え変わり時の注意ポイント② 萌出遅延 何らかの原因で永久歯がなかなか生えてこない状況を萌出遅延といいます。永久歯の萌出 の大幅な遅れにより隣にある永久歯や歯並びかみ合わせ全体まで影響が及ぶ可能性がある ため注意が必要です。萌出遅延をそのままにしておくと、隣の歯の永久歯の根にぶつか り、歯根吸収を引き起こしてしまうこともあります。また、永久歯の萌出遅延が長引け ば、将来的に自然に生えてこない状態となり、歯並びやかみ合わせにも大きな影響を与え ます。治療法としては、永久歯の形成そのものが遅い場合もありますが、生えてくるうえ で障害となる他の原因があれば速やかに対処します。具体的にはいつまでも残っている乳 歯や過剰歯の抜歯、まれではありますが歯牙腫の摘出などです。それでも永久歯が生えて こない場合には歯を引っ張り出す手術や矯正歯科などを検討します。 生え変わり時の注意ポイント③ 異所萌出 歯が本来生えるべき位置から離れて出てきたり、大きく傾いたまま生えてくることをさし ます。「八重歯」はまさに異所萌出です。この八重歯よりも多く、しかし早い時期に起こ るのが第一大臼歯の異所萌出です。6歳以降によく見られます。なかなか歯が出てこない ため、レントゲンで発見されることもあります。第一大臼歯の異所萌出の程度が大きい場 合には、第一大臼歯が遅れて生えてきたり、あるいは完全に生えない状態のままで対の歯 と噛みあったりします。そうすると対になる歯が伸びすぎてしまうこともあります。ま た、隣にある第二大臼歯の下にもぐりこむことによって、乳臼歯が早くに抜け落ちてしま うことがあります。これらはいずれも歯並びやかみ合わせの異常につながります。治療法 はスペース確保と傾きの修正のための治療を行います。スペース確保では、ゴム製の素材 などを第一大臼歯と隣の歯の間に挟んでスペースを作ったり、乳歯を一部削って引っ掛か りを取り除いたりします。それでも効果がなかったり、これらの治療が出来ない場合は矯 正歯科を行います。 生え変わり時の注意ポイント④ 過剰歯 過剰歯とは正常な歯の数より多く存在する歯のことです。上の歯にもっともよくみられま す。乳歯の時期に発見されることが多く。その後の永久歯列に大きな影響を及ぼします。 永久歯が生えるべき場所に過剰歯が生えてくるためスペースがなくなり歯並び、かみ合わ せ前歯が離れるなど、永久歯に影響が出ることもあります。乳歯列期に過剰歯を発見して もすぐに抜歯できるとは限りませんが抜歯までのスケジュールやその後の計画を立てるた め、早期発見が大切です。過剰歯が他の永久歯に影響を及ぼす場合は、時期をみて抜歯し ます。特に逆生過剰歯では処置しなければ埋まったままになりますので抜歯します。抜歯 後は矯正歯科により歯並びやかみ合わせを整えます。なお、歯並びやかみ合わせに影響が なければ。処置をせず経過をみる場合もあります。抜歯は出来るだけ早期に行うことが望 ましいですが、低年齢での抜歯は難しいため、抜歯時期を先送りすることがあります。ただし、年齢が上がりすぎると抜歯が困難になることもあるため、かかりつけの歯科医師と 相談して対応を決めていきます。 生え変わり時の注意ポイント⑤ 先天欠如 永久歯の先天欠如とは何らかの原因であごの中に歯が形成されないことをいいます。現 在、約 10 年に 1 人の割合でみられることが分かっています。1 本~多数の永久歯が作られ ないことがあり、上の歯よりも下の歯に先天欠如がある場合が多いです。永久歯の先天欠 如は、歯並びやかみ合わせに悪影響を及ぼす可能性が高いと言われています。また、先天 欠如がある場合は乳歯を永久歯の代わりとして長く使っていくため、乳歯を虫歯にさせな い徹底した歯みがきや定期健診による管理が必要となります。乳歯を長くよい状態で使う ために、早い時期に発見したいですね。先天欠如があるかどうかを判断する時期は一般的 な永久歯の歯胚の形成時期を考慮して 7 歳以降が目安とされています。 先天欠如が判明したらすぐに治療が必要になるとは限りませんが、乳歯をできるだけ残す ために専門家による定期的な虫歯・歯周病予防が大切です。乳歯を代用できない場合は矯 正で歯を移動させて永久歯の先天欠如のある部位を閉鎖します。乳歯が抜ける前の学童期 より治療が可能です。それか、ブリッジにする方法は先天欠如部位の両隣の歯を削って土 台をつくり、橋渡しするように人工の歯を入れる、一般に乳歯が抜けた後の成人期に行い ます。それか、インプラントの方法。あごの骨にネジを埋め込みそれを土台として人工の 歯を入れる方法、一般に乳歯が抜けた後の成人期に治療をします。それか、部分入れ歯。 両隣の歯を支えにした取外しのできるものです。一般に乳歯が抜けた後の成人期に治療を 行います。 ここまで紹介した歯の生え変わり時期のトラブルを早期に発見するには、定期的にかかり つけ歯科を受診しチェックしてもらうことです。3~4 か月に 1 回診てもらうことが望まし いでしょう。定期健診では、視診で虫歯の有無をチェックする事はもちろん、歯の数や生 え方、乳歯のグラグラしている程度、永久歯が生えてくるスペースなどを確認します。そ れと触診します。正常な場合、乳歯が抜けてしばらくすると歯ぐきに盛り上がりがみられ ます。永久歯が歯ぐきを突き破って出てこようとするサインです。このサインがあるかど うかを触って確かめます。その後必要であればレントゲンの撮影を行います。定期健診で 毎回撮ることはありませんが、7 歳をすぎたら一度パノラマ写真を撮影し検査をおすすめ します。 最近は、マスク生活の影響から矯正歯科受ける方が増えているように思います。治療経験 のある親御さんもいらっしゃいますでしょう。じつは大人になった時の歯並びやかみ合わ せの問題は、生え変わりの時期のトラブルが直結していることが多いといわれています。 つまり歯並びの問題は永久歯が出てきたときにサインが出ているのです。しかも永久歯列 の完成とともに問題は大きくなっていきます。歯並びが悪ければケアが難しくなり、大人 になって歯周病が悪化するといったところにもつながっていきます。永久歯の萌出時に現 れた問題は、その後のお口の健康維持の足かせとなってしまうのです。何十年と使うお口です。できれば問題が小さいうちにつみとっていきたいですよね。そしてしっかりと噛め るよう機能させていただきたいものです。それを可能にさせるのが定期健診による早期発 見・対応なのです。 そしてほかに出来ることはおうちでの歯みがきになります。歯みがきで細菌の塊、つまり プラークをしっかり落として溜めないことが大切です。そのプラークの溜まりやすい場所 がくぼみのあるところです。歯と歯ぐきの境目や歯と歯の間、かみ合わせの面に溜まりや すいのです。もしお口のなかに被せものや詰め物の段差や、矯正器具などがあるとそうい う部分にも溜まります。しかし、そういった部分は歯ブラシの毛先も届きにくくみがきに くいですので、その部分は意識してみがきます。歯みがきの大原則として、プラークはみ がいて落とすものなのと、まずは歯ブラシでみがけるレベルを上げます。歯周病のある方 では歯間ブラシの使用はとても重要です。歯ぐきが下がって歯と歯の間が開いている状態 ですと、歯ブラシ 1 本でみがくことはなかなか難しかったりするからです。ただし、お口 のなか全体をきれいにすることを考えたら、まずは歯ブラシでみがけるレベルをあげてい くことが大切です。そのうえで落とせないプラークがあれば、歯間ブラシやフロスなどを 使うようにしましょう。歯みがきは歯を磨くものでブラシの当たった部分のみプラークが 落ちます。歯みがきの指導時に患者さんに磨いてもらうと歯ブラシの毛先のほとんどを歯 ぐきに当ててしまっている方が意外と多いです。プラークの溜まりやすい場所の1つが歯 と歯ぐきの境目です。プラークがついているのは歯の面ですから、ブラシを歯に当てるこ とを意識していきましょう。ブラシの当たったプラークのみが落ちていきますので、闇雲 にお口のなかで歯ブラシを動かしていても、ブラシがプラークにあたっていなければ落ち ません。プラークをしっかり狙い撃ちしていきましょう。歯ブラシを 90°で当てるとプラ ークは落ちやすいです。そしてツルツルな部分よりもくぼみにつきやすいですのです。前 歯の平らな部分から虫歯や歯周病が発症することはありません。発症する場所は、プラー クが溜まりやすいくぼみがあるようなところからです。くぼみは歯ぐきに近い部分に多い です。この部分に歯ブラシが当たるように意識します。お子さんでは噛みあう面を、詰め 物被せものがある方では歯との境目もよく磨きましょう指で触ってみるとよく分かると思 いますが、歯は丸みをおびています。歯の面に対し歯ブラシを 90°で当てるのがもっとも プラークが落ちるので丸みに応じて歯ブラシの傾きを変化させていきます。歯の丸みの程 度は歯によってさまざまです。 テクニックとしては、歯ぐきにダメージを与えないように歯ブラシを少し倒して磨いてみ る。歯と歯の間は複雑な形をしており、もっともプラークが溜まりやすい部分です。ここ には歯ぐきの山もあります。強い圧で横みがきをすると歯ブラシが歯ぐきを刺激し、歯ぐ きが下がってしまうことがあります。歯ぐきを守りながら、しっかりとプラークを落とす ことが大切です。歯の面に対して歯ブラシを 90°に当てます。その後歯ブラシを歯ぐき側 へ少し寝かせます。歯ぐきの側面を歯ぐきの沿わせるようなイメージです。その状態で歯 ブラシを小刻みに軽く動かすと毛先が歯頚部に入っていきます。そして、歯ブラシを歯ぐきに沿わせた状態で隣の歯頚部へ移動させてみがきます。歯ブラシを少し倒して磨いてみ たら移動が出来たら歯ブラシを小刻みに動かします。さらに隣の歯頚部へ移動し、表面・ 裏面のすべての歯頚部をみがきます。歯間部を中心にみがいていますが、歯間部の間の歯 の平らな面も自然とみがけていることになります。 プラークを上手に落とすには歯ブラシ選びのポイントがあります。 ①1 本 1 本の毛が密集しすぎないこと②短すぎない(大人が子ども用歯ブラシは選ばな い)コシがある ③細い毛⑤ヘッドが大きすぎないです。歯ブラシは無理して全面を当てる必要はなく、一 部の毛が当たればプラークは落ちます。なので歯の裏側は先の方を使いみがくとよいでし ょう。 ほとんどの方が 1 日 2 回以上、歯をみがいていると思います。このような習慣がついてい ることは、とてもすばらしいことだと思います。ただ、歯みがきの指導を受けたことがな く、効果的なみがき方を身につけている人は少ないのが現状です。「毎日磨いているのに 歯周病や虫歯を発症してしまった」という原因の 1 つが、ここにあるといえます。せっか くみがくのであれば効果のあるみがき方をしたいですよね。歯医者さんでは、患者さんそ れぞれのお口に合ったオーダーメイドな歯みがき方法を教えてくれます。ぜひ一度受診してあなたに合った方法を身につけましょう