
処置後の症状の移り変わりと連絡の目安
SRP(スケーリング・ルートプレーニング)後の歯ぐきの痛みや冷たいものがしみる症状は、日がたつにつれて軽くなっていくことが多いです。ただし、日数だけで待つか受診するかを決めるのではなく、痛みの変化や食事・歯みがきへの支障があるかで判断することが大切です。
処置前よりもしみたり痛んだりすると、このまま次の処置を受けてよいのか迷う方もいます。この記事では、自宅で様子を見てよい経過と早めに歯科医院へ連絡したい症状の違い、痛みを避けて清掃までやめてしまわないための工夫、そして次回の処置前に歯科医師へ相談する際の整理のポイントを解説します。
この記事の要点まとめ
- SRP後の歯ぐきの痛みやしみる症状は、日がたつにつれて軽くなることが多いですが、治り方は人によって違います。
- 痛みが強まる、腫れや熱がある、食べたり飲んだりが難しいときは、歯科医院へ早めに連絡しましょう。
- 歯みがきは力を抜いて続け、症状や食事への影響をメモして、次の処置の前に歯科医師へ伝えましょう。
SRP後の痛みの経過と、自宅で様子を見るか歯科へ連絡するかの分かれ目

SRP(歯ぐきの溝の奥にある歯石や汚れを取り、歯の根の表面を滑らかにする処置)のあとは、症状の種類によって落ち着くまでの時期が異なります。一般的な日数の目安を知っておくとともに、日数を待たずに歯科医院へ連絡したい変化を分けておくことが大切です。
歯ぐきの痛みと冷たいもののしみ方は、軽くなる時期が違う
歯ぐきそのものの痛みと、冷たい飲み物などがしみる知覚過敏とでは、症状が和らぐまでの期間に違いがあります。 器具が触れたことによる歯ぐきのうずきや、歯ブラシが当たったときの痛みは、日ごとに軽くなっていくのであれば、回復の途中と考えられます。
一方で、冷たい水や温かい食事がしみる症状は、歯ぐきの痛みより長く続くことがあります。これは、歯の根元を覆っていた歯石が取り除かれ、さらに歯ぐきの腫れが引いて引き締まることで、刺激を感じやすい歯根面(歯の根の表面)が出てくるためです。
出てきた根元は、多くの場合そのまま見えた状態が続きますが、しみる症状は時間とともに落ち着くことが多いです。ルートプレーニングのあとに「歯ぐきが下がった」と感じるのも、この炎症の軽減による変化が関わっています。
ただし、もともとの歯石の量や歯周ポケット(歯と歯ぐきの境目の溝)の深さ、1回で処置した本数、糖尿病などの全身状態によっても経過には個人差があります。
日数を待たずに連絡したい症状と、急ぎ度の目安
処置からの日数が浅くても、痛みの強まり方や全身の症状によっては早めの確認が必要です。現在の状態がどれに当てはまるか、次の表で目安を整理してください。
| 連絡の目安 | 主な症状・変化 |
|---|---|
| その日のうちに連絡したい変化 | ・痛みが強く、食事や水分摂取がほとんどできない<br>・頬や顎の下まで腫れが広がっている、発熱がある<br>・清潔なガーゼ等で圧迫しても出血が止まりにくい |
| 早めに(当日〜翌日に)連絡したい変化 | ・処置後、日を追うごとに痛みが強くなっている<br>・歯ぐきから膿が出る、何もしていなくてもズキズキ痛む<br>・市販や処方の鎮痛剤がほとんど効かない |
| 自宅で様子を見てよい目安 | ・昨日より今日と、日ごとに痛みや違和感が軽くなっている<br>・冷たいものや歯ブラシが当たった瞬間だけしみ、すぐ治まる |
なお、SRPのあとの痛みだと思っていても、処置した歯ぐきとは別の場所にできた口内炎が2週間たっても治らない、何度もくり返す、いくつも同時にできるといったときは、SRPの経過とは分けて考えます。自分で判断して様子を見続けず、口腔内科などへ相談してください1。また、強い痛みがなくても、処置した場所とは別に気になる腫れが続くときは、SRPの影響と決めつけずに歯科医院で確かめてもらいましょう。
痛みの対処と一緒に、歯を残すための清掃も考える
痛みを我慢してやり過ごすことと同じくらい避けたいのが、痛みを恐れて処置した部分の歯みがきを完全にやめてしまうことです。 当院では、大切な歯を残すためには歯そのものだけを診るのではなく、歯を支える歯ぐきと顎の骨が健康であることが必要だと捉え、周囲の組織を整えることを保存治療の土台に置いています。
立派な家を建てても、土台となる土地が不安定では長く暮らし続けることができません。歯も同じで、SRPによって歯ぐきの中の歯石を取り除いても、その後にプラーク(歯垢)が再びたまれば、歯ぐきの炎症がぶり返してしまいます。一度溶けてしまった顎の骨は自然には元に戻らないため、痛みへの対処と、刺激を抑えながら清潔を保つ工夫はセットで考える必要があります。
ポイント
処置後の痛みを避けるために歯みがきまで止めてしまうと、整え始めた歯ぐきの環境が再び悪化しやすくなります。しみる期間も無理なく清掃を続けられる方法を、歯科医院と一緒に整えていくことが歯を守る土台になります。
鎮痛剤を使うときの注意と、持病や服用中の薬がある場合の相談先
処置のあとに痛み止めが出ているときは、歯科医師に言われた量と飲む間隔を守って使います。飲むタイミングも、出されたときの説明に合わせてください。
家にある市販の痛み止めを使うときは、いま飲んでいるほかの薬との飲み合わせに気をつけます。胃や腸、腎臓の病気やぜんそくがある方も注意が必要です。妊娠中や授乳中の方、内科などで薬をもらっている方は、自分で決めて飲まず、処置を受けた歯科医院や薬剤師に前もってたずねてください。
また、鎮痛剤で痛みが一時的に和らいでいる間も、硬いものを処置部位で強く噛むのは控えましょう。薬を飲んでも痛みがほとんど変わらない場合は、前の項目で挙げた「早めに(当日〜翌日に)連絡したい変化」として歯科医院へ伝えてください。
清掃と食事を続けながら次回のSRPにつなげる、症状の伝え方と相談の進め方

痛みやしみがある間は、歯ブラシの当て方や食事のとり方を少し変えるだけでも負担を減らせます。それでも困る場面があるときは、遠慮せずに歯科医院へ伝え、ケアの方法や次回の処置の進め方を一緒に調整してもらいましょう。
しみるときも清掃をやめず、磨き方を相談する
処置した部位がしみるときは、毛先のやわらかい歯ブラシを選び、力を抜いて小刻みに動かすように当てます。 汚れを落とそうとして硬い歯ブラシでゴシゴシこすると、歯ぐきが傷ついたり、さらなる歯肉退縮(歯ぐき下がり)を招いたりする原因になります。
反対に、少し血がにじむからといって歯ブラシをまったく当てないでいると、細菌のかたまりであるプラークが残って歯ぐきの腫れが長引きます。うがいの水は冷たい水道水ではなく、体温に近いぬるま湯を使うと刺激を和らげることができます。知覚過敏用の歯磨き剤を使いたい場合は、今の歯ぐきの状態に合っているかを歯科医院で確認してから取り入れるとよいでしょう。
当院では、歯周病治療の症例としてブラッシング指導とスケーリング(歯石除去)を掲載しており、保険適用で行えることや、処置後に一時的にしみる可能性があることもあわせて記載しています。しみることがあっても清掃と磨き方の確認は治療の一部ですので、当て方に迷うときはその都度ご相談ください。
仕事中や自宅で困る場面を、ケアの相談につなげる
仕事の合間や家での食事では、しみやすいものをしばらく控える工夫が役立ちます。外回りや休けい中の飲み物は、氷の入った冷たいお茶や炭酸飲料ではなく、常温の水や白湯を選びましょう。食事は処置していない反対側の歯を中心にゆっくり噛み、熱い汁物や酸っぱいもの、香辛料なども、しみが強いあいだは控えたほうがよいでしょう。
こうした日常の工夫をしても「昼食のたびに痛くて食べづらい」「朝の歯みがきでどうしても血が出る」といった困りごとは起こり得ます。当院では、スタッフが患者さんに改善策を提案し、ご自宅で実行していただいた後のお口の変化を続けて見ていくことを大切にしています。ご自身の生活リズムの中でどの場面がつらいのかを具体的に共有していただくことで、無理なく続けられるケアを一緒に考えていきます。
次回処置の前に、痛みと食事への支障を伝える
反対側の歯など、次回のSRPが予定されている場合は、予約日にそのまま処置へ進む前に、前回の処置後の経過を歯科医師へ伝えてください。当院では、歯を残せるかどうかだけでなく、残した歯に十分な機能を期待できるかどうかも重視しています。 そのため、痛みの強さだけでなく「普段どおり噛めているか」「食事に支障が出ていないか」も大切な判断材料になります。
なお、重度の歯周病などでどうしても歯を残すことが難しい場合や、残しても十分な機能が期待できない場合には、インプラント治療で噛める状態をつくる選択肢もあります。インプラントは、顎の骨に人工の歯の根を埋め込み、その上に人工の歯をつける治療です。インプラントは原則として保険が使えない自由診療です。
一般的な費用の目安は、人工の歯の根1本あたり20万〜40万円ほどで、その上につける歯の費用は種類や材質によって変わります2。当院の症例紹介では、インプラント1本35万円、骨を補う処置(GBR)や歯ぐきの移植(FGG)は1ブロック5万円などの費用を載せています。また、外科処置にともなう腫れ・痛み・出血などのリスクや、術後も続けてメンテナンスが必要になる点も事前に確認しておきましょう。
痛みが長引いているときの再診では、一般的には歯周ポケットの深さや歯ぐきの腫れ、かみ合わせの強さ、しみ止め(知覚過敏をおさえる薬)をぬる必要があるかなどを確かめます。前回の痛みが強かったときは、1回で処置する範囲をせまくする、通う間隔を1〜2週間ほど空けて歯ぐきが落ち着くのを待つ、といった調整を相談することもできます。
また、処置中の痛みが心配な場合は、表面麻酔や局所麻酔を使えるかを前もって歯科医院にたずねておきましょう。歯科治療への不安や緊張が特に強い場合には、点滴などでうとうとした状態をつくる鎮静法などの選択肢が検討されることもあります3。
ポイント
「このくらいで言っていいのかな」と遠慮せず、食事や歯みがきで困った場面を処置前に伝えてください。処置する範囲や麻酔の工夫、通院の間隔は、前回のお口の反応をもとに調整できます。
処置した医院への連絡と、奈良県葛城市の当院へ相談する場合の流れ
SRP後の症状について確認したいときは、まず処置を担当した歯科医院へ連絡するのが基本です。どの歯のどの深さまで処置したかという記録があるため、経過の判断がスムーズに行えます。電話などで連絡する際は、次の項目をメモにまとめておくと状況が伝わりやすくなります。
- 処置を受けた日と場所:何日前に、上下左右のどのあたりを処置したか
- 症状の内容と場面:冷たいものがしみるのか、噛むと痛いのか、何もしなくても痛むのか
- 日ごとの変化:処置直後と比べて軽くなっているか、強まっているか
- その他の症状と薬:腫れ・出血・発熱の有無、服用中の薬や持病
もし「次回の処置方針について別の視点からも話を聞きたい」「生活圏で通いやすい歯科医院を探している」といった理由で他院へ相談する場合も、上記のメモがそのまま役立ちます。奈良県葛城市にある当院へご相談いただく際も、まずはご予約時にお電話等でこれまでの処置時期と現在の症状をお伝えください。当院は近鉄御所線「新庄駅」から徒歩7分で大型駐車場もあり、土曜日も8:30から診療しています。気になる症状がございましたら、お気軽にご相談ください。
よくある質問
Q. 歯科におけるSRPの間隔はどのくらいですか?
お口全体を数回に分けてSRPを行う場合、1週間から2週間ほどの間隔を空けて進めることがよくあります。処置した部分の歯ぐきの腫れや痛みが落ち着くのを待ち、反対側で食事ができる状態を保ちながら進めるためです。ただし、歯石の量や歯周ポケットの深さ、お仕事のご都合などによっても受診のペースは調整できますので、前回の痛みが残っている場合は次回処置の前に歯科医師へお伝えください。
Q. 治療した歯や歯ぐきがズキズキ痛むのはなぜですか?
SRPの直後は、歯ぐきの奥の歯石を取り除く際に生じた細かな傷や炎症への反応として、一時的にうずくような痛みが出ることがあります。数日で和らぐ場合は回復の過程と考えられますが、何もしなくても脈打つようにズキズキ痛む状態が続く場合や、痛みが日ごとに強まる場合は、歯周ポケット内の急な炎症や感染、あるいは歯の神経(歯髄)への刺激などが関わっている可能性があります。我慢せず歯科医院へ連絡してください。
Q. 磨きすぎで下がった歯ぐきは自然に戻りますか?
一度下がった歯ぐきや溶けてしまった歯槽骨(歯を支える骨)は、基本的には自然には元の高さへ戻りません。歯ぐきが下がる原因には、年齢を重ねることのほか、力を入れすぎた歯みがき(オーバーブラッシング)や歯周病などがあります4。ただし、歯ブラシの毛の硬さや当てる力を見直すことで、それ以上の歯ぐき下がりや根元のすり減りを抑えることは目指せるため、まずは今のお口に合った磨き方を歯科衛生士と一緒に確認しましょう。
参考文献
1. https://www.den.hokudai.ac.jp/kouge1/news-topics/642
2. インプラントをしたい|口腔外科相談室|日本口腔外科学会. https://www.jsoms.or.jp/public/soudan/ha/inpurant/
3. 歯科麻酔科・ペインクリニック | 公立大学法人 九州歯科大学附属病院 https://www.kyu-dent.ac.jp/hospital/specialty/anesthesia/
4. 歯みがき い・ろ・は クイズで学ぼう!歯の基礎知識|「歯の学校」 WEBで学ぶ、歯と口の健康。|日本歯科医師会. https://www.jda.or.jp/hanogakko/vol77/iroha.html
5. Barahim AA, Shemais N, Mousa A et al. Clinical and radiographic evaluation of non-surgical therapy with and without ozone gel application in controlled type 2 diabetic patients with periodontitis: a randomized controlled clinical trial. BMC oral health. 2024. PMID: 39587593 / DOI: 10.1186/s12903-024-05212-7
四天王寺高校卒
大阪大学歯学部卒
勤務医を経て
2010年「いまもと歯科クリニック」を奈良県 葛城市北花内にて開院
インプラントメーカーインストラクター
IDIAドミニカインプラント、サイナスリフト実習セミナー 受講
Botis人工骨、BGR(骨再生誘導)セミナーinシンガポール 受講
CGF(完全自己血由来フィブリンゲル)セミナー 受講
マイクロサージェリーインプラント・歯肉移植、実習コースセミナー 受講
牛ぐぼエンドアドバンスコース 受講
石井エンド 受講
JIADS 受講
SJCD 受講
JIPI 受講
JPI 受講

